テレビマンユニオン45周年記念プロジェクト 今野勉の「勉塾」

テレビ放送開始から60年。
「お前はただの現在にすぎない」から44年。
現役ディレクター54年の今野勉が新しい言葉と、やわらかい発想で深く、熱く、テレビを語る・・・


テレビマンユニオン創立の中心メンバーであり、現在もディレクターとして第一線で活躍する今野勉が、共著「お前はただの現在にすぎない」で“テレビになにが可能か”を世に問うてから間もなく半世紀が経とうとしています。この度、開講する「勉塾」では、今野勉がその50有余年のキャリアの中で経験し、見聞きしてきたテレビマンユニオン創立の真実やテレビ業界の歴史と変遷、さらに未来のテレビジョンに向けての独自のビジョンを語りつくします。参加者を限定したゼミ形式で、資料映像の上映やゲストトークも交え、第1期(夏)3回、第2期(冬)3回、全6回の集中講義を行います。この試みを通じて、皆様がテレビジョンとは何であるか、テレビの未来はどんなものかを、あらためて考えるきっかけとなれば幸いです。

今野勉からのメッセージ

 2013年は、テレビ放送開始60年の年です。この60年間のテレビメディア論の中に必ず登場するのが、「お前はただの現在にすぎない」<萩元晴彦・村木良彦・今野勉 共著>(1969)です。2013年3月で刊行44年になりました。
 私を含めて、著者らが1970年に創立した創造者集団テレビマンユニオンは44年目を迎え、今年1月には毎日芸術賞を受けました。
 私は1959年から一貫してテレビディレクターとして現場に立ち続け、この3月で54年を迎えました。実は、この4月で私は喜寿となりました。77歳ですが現役です。昨年演出した3Dドキュメンタリー「疾走!相馬野馬追~東日本大震災を越えて」(NHK)は、この1月にJRA(日本中央競馬会)の馬事文化賞を受賞しました。
 折しも、東京藝術大学芸術情報センターの松井茂助教ら3名の研究者による共同研究「思想としてのテレビ~今野勉の映像表現とテレビマンユニオンに関する研究」が放送文化基金の助成金を受けてこの4月から始動しました。
 このような流れの中で、今、さまざまな思いをこめて、テレビジョンの過去・現在・未来を、新しい言葉とやわらかい発想で、深く、熱く、語るライブトーク「勉塾」を開講する運びとなりました。皆さんとお会いし、熱い議論を闘わせることを楽しみにお待ちしています。

※「お前はただの現在にすぎない テレビになにが可能か」は2008年に朝日新聞出版から文庫本として刊行されています。

開講日時

講義概要

「勉塾」第二期に向けて(今野勉)

 この案内は、第一期の受講者で引き続き第二期の受講を希望される方々と新規受講希望の方を対象にしたものですが、実は、第一期受講者のうち、仕事の都合上参加出来ない数名を除いてほぼ全員第二期受講希望となりましたので、新規受講者の枠が非常に狭くなったことをご理解頂かなくてはなりません。
 第一期受講者のアンケート結果によると、映像と話の交互展開が好評のようですので、第二期もその構成を一期以上に充実させるべく努力します。
 また、各回で質疑応答の時間を取って欲しいという要望も多くありました。
 一番組をまるまる上映しての講義・討論を提案する方も少なからずありました。
 これらの要望を満たそうとすると、ゲストの時間があまり取れそうにないので、この際むしろ、受講者の皆さんをゲストとしてとらえて、随時発言して頂くのもいいかもしれないと考えるようになっています。
 熱いアンケートをお寄せくださった第一期受講者の皆さん、本当にありがとうございました。

以下、今のところの第二期の概要です(当初お知らせしたものから一部テーマに変更があります)。

第二期『<撃つ>と<耕す>』

 <耕す>とは:視聴者のテレビを見るという行為は、日常生活の中に組み込まれていること、テレビ番組を作るという行為は、制作者の日常生活の中に組み込まれていること、などを考え合わせると、日々営々として営まれるそれらの行為は、比喩的に言えば、農民が日々黙々と畑の土を耕している営みに似ている。それは、生活であり、日常である。
 しかし時にテレビ番組は、非日常的な時間を作りだす。長期にわたる取材による社会悪の告発や、それまでの価値観を一挙に打ち壊すような表現が、突出して現れることがある。比喩的に言えば、それは銃を持って何日も獣を追い続けた猟師が、ついに一発の弾丸で獣を射止める行為に似ている。 どちらも大事だが、テレビの基盤は<耕す>にあると、私は見る。
 毎日、毎週、毎月、毎年、営々として営まれる<耕す>という行為は、それは単調で退屈なものであるが、こつこつと少しずつ耕しているのは、硬い土くれ、即ち、硬直した価値観である。その集積が豊かな土地を作り、多様な植物を育てる。
 そのことの意味を、あらためて確認しようというのが、第二期のテーマである。
 第一期で「25年間テレビの仕事をしてきて、私には顔がない」という久世光彦の言葉を紹介したが、その久世の嘆きに応えることが、テレビの本質に光をあてることになるだろう。

■#4  11月29日(金)18:00~22:00
 「テレビは技術史である~フィジカルが生むメタフィジカル」
 テレビジョンは、一点の電波塔から発射される電波の範囲内の受像機は、送信されてきた映像を全て同時に受信できるというシステムである。受像機の数に制限はなく、いわば無限大である。一点の電波塔をつなげていけば同時受信は一国中にも地球上にも拡大できる。この圧倒的な告知能力、しかもその内容は音声を伴った動画である。それは既存のメディアにはない、マスコミュニケーションとしての機能である。一斉の告知能力、同時性、現実を写す動画のリアリティ。それがそもそものテレビである。
 テレビは、メディア(媒体)という点から考えると、それまでの活字、写真、映画、レコード、ラジオ放送などのメディアと全く違うものである。それまでのメディアは、記録する機能を持つことでメディア(媒体)となった。既存のメディアは印刷(活字)、フィルム現像(写真、映画)、録音(レコード、ラジオ)など、記録する機能を持っていた。それに比し、テレビは伝達のみの機能を持つだけで、記録の機能を持たないメディア(媒体)として出発した。 テレビの初期(1936年のベルリン・オリンピックのテレビ中継から1960年代まで)、この記録性を持たないというメディアの特性は、誰にも特に意識されることはなかった。テレビは、生放送であってそれは繰り返しのきかない一回性のものであることを、誰もが当然のこととして受け入れていた。テレビのこの物理的(フィジカル)な特性は、人々(制作者、テレビ局、視聴者)にどういうメタフィジカル(意識)をもたらしたか。
 テレビの初期(私たちの世代を含む)、VTRという録画機能を持つことになっても、記録された番組を消去してしまうことに誰一人として違和感を持たなかったという歴史的事実を私たちは持つ。VTR消去は、これまで、VTRが高価であったために消去・再利用した、あるいは著作権上一時固定のものであったが故に消去されたなどと理解されてきたが、実は何万人というプロデューサーやディレクターが、誰ひとり自分の番組が消去されることに違和感をも持たなかったことがその背景にあったことを、これまで誰一人気づいていない。 すなわち、これこそがテレビというフィジカルが生み出したメタフィジカルであり、そのメタフィジカル(意識・思想)が、実は既存の芸術分野では考えられない創造上のラジカルさを生んだのではないか。このことを、私は第二期で検証してみようと思う。
 さらにテレビ技術はこれまで一貫して、小型化、機能向上、安価、利便性の道を辿ってきた。一言で言えば、それはテレビ機材(制作上の機械、および受像機)のコモディティ化(日用品化)の道であった。
 日用品化した撮影機材や受像機は、制作現場に、そして一般の人々の生活にどのような影響を与えているか。これが第二の検証である。
・カメラを空中へ放り投げる発想はプロかアマか
・デジタルはフィルムを呑みこむ
・<テレビジョン=放送>から<テレビジョン&放送>へ
などのサブ・テーマは、以上の論旨から話されるであろう。そしてその中から「創ることと暮らすこと」すなわち、「創造者集団はいかにして成立するか」のテーマが自ずと浮かび上がってくるはずである。

■#5  11月30日(土)14:00~18:00
 「テレビ的なるものの<現在(いま)>の検証」
 最初の予告では、この日のテーマは「創造者集団はいかにして成長するか~創ることと暮らすこと」であったが、第一期で消化しきれなかった「テレビ的なるものの<現在>」を具体的に番組を検証すること、を二日目のテーマにしたい。
 私たちが現在見ているドラマやドキュメンタリー、そして低俗のそしりを受けている多くのバラエティ番組の中で、いま何が起こっているか、それはテレビ史の中でどう位置づけられるのか。具体的に番組を検証しつつ新たな地平へ論を進めていきたい。

■#6  12月1日(日)14:00~18:00
 「テレビの明日・・・を考える」
 察するに、「テレビの未来」を受講者の皆さんは、やはりどこかで語り合いたいのではなかろうか。 「テレビ」は、いま、地上波だけを見ているだけでは掴みきれない。BS、CSを含む300チャンネルの「テレビ」を視野に入れて「テレビ」はどこへ向かうのか、を考えてみたい。
 そして、放送と通信が一体化している現在、「ネット社会とテレビ」というテーマもやはり、皆さんの語りたいところではないだろうか。
 三日目は、まずそのテーマを契機にして、受講者の皆さんからの議論のための問題提起を持ちたい。
 アンケートで少なからずあった要望~「何か番組をまるごと見て、それをもとに議論する場が欲しい」~についてはこれから熟考してみようと思う。

では、「勉塾」でお待ちしています。



 参考資料 

第一期『<テレビ的なるもの>の現在(いま)』(終了致しました)

■#1  8月30日(金)18:00~22:00
 「死者たちへ捧げるバラード~先人たちの思想と実作」
 ・神話時代の検証
  ゲスト:
   牛山純一   「実と虚のパイオニア」
   吉田直哉   「作業仮説と『日本の素顔』」
   和田勉   「文楽~風景なきドラマ」
   木村栄文  「ドキュメンタリーを演ずる」
   萩元晴彦  「『時間』の発見」
   村木良彦  「『時間』を捨ててコラージュへ」
   実相時昭雄 「映画と音楽とテレビの狭間で」

  特別ゲスト:
   大島渚  「大島渚とテレビ~私たちは併走した」
 ・テレビ史を書き替える~<それ>は1970年から始まった

■#2  8月31日(土)14:00~18:00  「テレビディレクターとは何か~日常的であることの意味」
 ・必然としてのテレビの思想=中継性、同時性、即興性、一回性、未完結性、無署名性
 ・テレビ的であることと映画的であること
  ☆伊丹十三の場合
  ☆是枝裕和の場合
  ゲスト:
   是枝裕和(テレビディレクター&映画監督)

■#3  9月1日(日)14:00~18:00
 「大衆の発見、創出、そして<テレビを見ない人たち>の出現」
 ・<テレビを見ない人たち>にとっての<テレビ>
 ・テレビの対極としての演劇~視聴者と観客
 ・いま演劇に何が起きているか~観客との関係
 ・地上波・BS・CS・録画・DVD・オンデマンド(PC)・ネット・スマホ~観客or視聴者はどこにいるか。
 ・<テレビを見る人たち>へのメッセージ
  ゲスト:
   高山明(演劇ユニットPortB主宰・演出家)

応募方法

第二期の応募受付は終了致しました。

会場

テレビマンユニオン 本社
東京都渋谷区神宮前5-53-67
コスモス青山south棟

GoogleMap

募集人員

第二期 若干名(応募者多数の場合は抽選)
※第一期を受講された方で、すでに第二期受講の希望を出されている方は、新たなお申し込みは不要です。

募集期間

第二期:2013年9月24日(火)~10月18日(金)
抽選の結果は10月24日(木)までにお知らせします。

受講料

無料(ただし、資料代として各期1,000円を頂きます)

主催

テレビマンユニオン

お問い合わせ

テレビマンユニオン事業推進グループ
benjuku<at>tvu.co.jp
※お手数ですが<at>を@に変えて、メールをお送りください。

今野勉プロフィール

1936年生。テレビ演出家・脚本家。㈱テレビマンユニオン取締役・最高顧問。

略歴
1959 東北大学卒業、ラジオ東京(現TBS)入社。テレビ演出部配属。
1968 大阪万博 電電公社出展「電気通信館」プロデューサー(~1970)
1970 TBS退社、テレビマンユニオン創立に参加(代表取締役等を経て現職)
1996 長野オリンピック開・閉会式プロデューサー(~1998)
1998 武蔵野美術大学映像学科主任教授(~2005)

現在 放送人の会会長、放送文化基金評議員、向田邦子賞委員、日本脚本アーカイヴ推進コンソーシアム副代表理事他。

主な演出作品
1964 「土曜と月曜の間」(TBS) イタリア賞(大賞)
1965 「七人の刑事」(TBS~1968) 放送作家協会演出者賞、放送批評懇談会ギャラクシー賞
1970 「遠くへ行きたい」(YTV~1976) ギャラクシー賞選奨
1973 「天皇の世紀」(ABC) ギャラクシー賞
1975 「欧州から愛をこめて」(NTV) テレビ大賞優秀番組賞 ギャラクシー賞期間選奨
1977 「海は甦る」(TBS) プロデューサー協会優秀番組賞 テレビ大賞優秀番組賞
1987 「ああ妻よ、泣くのはあした」(NTV) 民放連盟賞優秀番組賞 ギャラクシー奨励賞
1988 「凍れる瞳」(NTV) ATP賞ベスト22番組 放送文化基金賞個人賞
1991 「真珠湾奇襲~ルーズベルトは知っていたか」(NTV) ギャラクシー賞選奨
1993 「地の底への精霊歌~炭鉱に民話の生まれる時」(NHK) ギャラクシー賞優秀賞
1994 「世界わが心の旅~岡田嘉子の失われた10年」 ATP賞ベスト20番組
1995 「こころの王国~童謡詩人金子みすゞの世界」(NHK) 芸術選奨文部大臣賞
2008 「ふたつの祖国をもつ女諜報員~鄭蘋如の真実~」(YTV) 民放連賞優秀番組賞
2012 「疾走!相馬野馬追」(NHK) JRA馬事文化賞

主な脚本
1989 「オイシイのが好き」(TBS)
1989 「光れ隻眼0.06」(NTV) 放送文化基金賞ドラマ部門本賞
1994 「続・病院で死ぬということ」(TBS) ATP優秀番組賞 放送文化基金優秀番組賞
1994 「新宿鮫」(NHK)

主な著書
「お前はただの現在にすぎない」(共著・田畑書店、1969年/朝日文庫、2008年)
「今野勉のテレビズム宣言」(フィルムアート社、1976年)
「真珠湾奇襲~ルーズベルトは知っていたか」(読売新聞社、1991年/PHP文庫、2001年)
「テレビの嘘を見破る」(新潮選書、2004年)
「金子みすゞふたたび」(小学館、2007年/同文庫、2011年)
「テレビの青春」(NTT出版、2009年)
「鴎外の恋人――百二十年後の真実」(NHK出版、2010年)
「それでもテレビは終わらない」(共著・岩波ブックレット、2010年)