週刊ブックレビュー2011年6~7月の放送分

週刊ブックレビュー2011年6~7月の放送分

<テレビマンユニオン担当回>

6月11日(922号)
司 会 室井滋/滑川和男(NHKアナウンサー)
ゲスト 井上章一(日本文化研究センター教授)/平松洋子(エッセイスト、フードジャーナリスト)/佐々木敦(評論家)

特集 作家の森絵都さんをお呼びし、最新作『この女』(筑摩書房)について、お話を伺う。
 
7月2日(925号)
司 会 藤沢周/柘植恵水(NHKアナウンサー)
ゲスト 堀江敏幸(作家)/木村綾子(タレント)/藤原智美(作家)

特集 窪美澄「ふがいない僕は空を見た」(新潮社)

7月30日(928号)
司 会 中江有里/柘植恵水(NHKアナウンサー)
ゲスト 佐藤良明(アメリカ文学者)/華恵(エッセイスト)/明川哲也(作家・道化師)

特集 戸井十月「道、果てるまで ユーラシア横断3万キロの日々+4大陸10万キロの記憶」(新潮社)

もう初回放送は終わってしまったかもしれませんが、922号の特集、森絵都さんの新作「この女」(筑摩書房)は、まさに今このタイミングで読まれることあらかじめ予期していたような小説です。1995年1月17日、阪神淡路大震災の朝、自転車で大阪に向かった青年の書き残した小説原稿が15年ぶりに見つかり、その残された小説を読むという設定。釜ヶ崎で暮らす青年の、ある金持ちに依頼されたアルバイトが釜ヶ崎を舞台にした陰謀劇の始まりだったという経緯を縦軸に、彼が知り合った若い女性のちょっと変わった、でも真剣な恋愛模様が描かれます。その結末は今の、日本中を襲う喪失感とまさに重なり、最後の一行が涙を誘います。
(市川陽)

児玉清さんを偲ぶ

 児玉清さんのあの温厚な表情と、そしてあの優しい語り口を支えていたものは何かと考えると、僕は、それは、哀しさだったと思う。
 ご逝去が公になった夜の「報道ステーション」で「徹子の部屋」に出演された際の児玉さんが30代で亡くなった娘さんのことを聞かれて思わず涙ぐんでしまう場面が放送されていた。娘さんが危篤に陥っている時も児玉さんが「週刊ブックレビュー」の収録をきちんとこなされたことを僕は知っているし、そのご葬儀の場で、辛さを堪えて毅然とされていた児玉さんも見た。僕にも娘がいるから、児玉さんの喪失感の千分の一ぐらいは分かるような気がする。でもここで言う哀しさとは、この広く知られている娘さんの早世という挿話のことだけを意味しない。

 必ずしも順調でなかったらしい新人映画俳優時代の話題を中心に、児玉さんは酔うと好んで自虐ネタを口にされた。とても楽しそうに。児玉さんはそれ以来、数限りない人生での体験と目撃を繰り返すうち、人間というものが本来もつ哀しさを、自分の中に蓄積させてきたのではなかったろうか。あの長身のお身体は、哀しさでできていたのだ、と僕は思う。哀しさを知らなければ、本なんか読む必要はないのだから。
 18年間、司会者として支えてくださった児玉清さんのいない「週刊ブックレビュー」を僕たちはこれから作っていかなければならない。
(「週刊ブックレビュー」プロデューサー)

市川陽

伏谷毅彦
高木昇
宇都浩一郎

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