食彩の王国 2016年8月

食彩の王国 2016年8月

 田園の稲が、青々として美しい季節になった。天候の良きを祈り、肥料を施し、次から次に伸びる雑草を抜き、虫害や鳥害を除け、困難と闘い続ける人々がこの瑞穂の風景を作っている。日本中を取材で駆け巡っていた頃、農家で初老の男性がつぶやいた言葉が忘れられない。「ああ、あと何回米が作れるだろう」。
 考えてみれば、米は年に一回しか収穫できない。農家の後継ぎとして、彼が責任を持つようになったのは幾つくらいだったのだろうか。仮に40歳とすれば、80歳まで働けたとして、40回しか採れないことになる。生涯を、収穫の数に置き換えられるということに驚いた。その時、母に「米は最後の一粒まで大切にしなさい」と教えられたことが、現実として胸に迫った。
 米だけではない。野菜も魚も畜産も、そんな一人の集積として食を支えてくれている。食前に、「あなたの命を私の命に換えさせていただきます」と祈るのは、ただ殺生のことだけではない。その食材を我々に届けるために、力を尽くしてくれた人への感謝も込められているのだ。「食彩の王国」も、「いただきます」の心を大切にしたい。
(土橋正道)

語り

薬師丸ひろ子

放送予定

    OA日     テーマ   担当D
#640 8月 6日 : 餃子    ※VIVIA
#641 8月13日 : 天草の宿  植田裕久
#642 8月20日 : 鯵     ※VIVIA 
#643 8月27日 : 築地    前夷里枝

8月のテレビマンユニオン 担当回は・・・ 

『もてなし宿の食材物語2016夏 天草篇』
今回の舞台は、野生のイルカが出迎えてくれる南の島、天草。人気のもてなし宿、「五足のくつ」の料理長・岩本教生さんが、宿の新作料理を考案するべく、食材を探す旅に出発。定置網漁で獲れる有明海の幸や、幻の地鶏「天草大王」に出会い、食材の宝庫、天草の魅力を再発見します。
大学時代、僕にとってのもてなし宿が江古田にありました。熊本出身の先輩の家に用もなく泊まりこんで、具のないインスタントラーメンをごちそうになり、万年床でジブリを垂れ流しながら雑魚寝するというのが、その宿の最高のおもてなしでした。
天草出身の岩本さんとは、実際にお会いしてはいませんが、素材を見ているだけで伝わってくる人の良さは、自分が出会った熊本県民のあたたかさと重なります。
今や海外でも通用する「OMOTENASHI」の心。日本が誇るホスピタリティの原点は、ここにありました。      
(鴨下満)


『築地市場食材物語』
「あの築地が無くなるっ!?」80年余の歴史を培ってきた、不動の存在“築地”。今や、海外からも人が押し寄せ、世界の台所となった築地が、この秋、豊洲へと移転します。
これまで幾度となく取り上げてきた当番組の総力を結集し、満を持して挑む、永久保存版!築地の花形・仲卸の驚きの技を始め、野菜のパラダイス銀河・青果。そして、ここでしか味わえない食の宝庫・魚がし横丁に、場外市場のディープなお店などなど。築地の裏の裏まで徹底的に取材します。
(間宮 圭次郎)

プロデューサー

土橋正道

アシスタントプロデューサー

平田早季

ディレクター

前夷里枝
植田裕久
橋本倫
永田暁児
細村舞衣
田中由美
阿部賢実
岸元美江

リサーチ

北口由子

アシスタントディレクター

細村舞依
鴨下満
間宮圭次郎