食彩の王国 2016年10月

食彩の王国 2016年10月

永六輔さんは、常に批判精神を秘めた独特の表現と活動で、サブカルチャーをメインカルチャーに押し上げた人だ。また、話して聴かせる表現を好んだ。古来、情報は語ることが中心だった。浅草の浄土真宗の寺に生まれた永さんは、大衆的な説教を聞いて育った。それが、現代の語り部として生きることに向かわせたのだろう。永さんがラジオに情熱を傾けてきたのも頷ける。そして、真面目なことを言う気恥ずかしさを、ジョークのオブラートで包んできた。全国各地で小さなお話の会を開き、風刺やユーモアで世相を語る姿は坊さんの辻説法そのものだった。
永さんは、テレビに出るタレントが物を食べて、「美味しい!」と言うのを嫌っていた。自分でも、旅先で物を食べるシーンがあると、「食べるところは撮らないで!」と言っていた。そのかわり、その裏側でどんな努力が払われたかを克明に語り、持ち味を伝えようとしていた。あるいは故事来歴によって、目の前の食べ物を浮き彫りにした。
この10月から放送14年目に入る「食彩の王国」は、食材を通じて紡ぐ日本人論だ。食べるシーンを使わないのは、永さんの影響も大きい。
(土橋正道)

語り

薬師丸ひろ子

放送予定

    OA日      テーマ   担当D
#648 10月 1日 : メカジキ  ※VIVIA
#649 10月 8日 : 里芋    前夷里枝
#650 10月15日 : 中華麺   ※VIVIA 
#651 10月22日 : 萩の地魚  細村舞衣
#652 10月29日 : 安納芋   ※VIVIA

10月のテレビマンユニオン 担当回は・・・ 

『里芋』
種芋から親芋、子芋、孫芋、ひ孫芋と4世代が収穫できる里芋は、子孫繁栄、子宝の象徴として、ハレの日に食べられてきました。もちろん、よくある縁起担ぎの類。受験前にカツ丼を食べるのと同じです。しかし、僕は5人兄弟の長男なのですが、実家の定番料理と言えば、なにを隠そう「里芋の煮っころがし」だったのです。これがもし、「肉じゃが」や「とろろ」や「スイートポテト」だったら、妹や弟たちは生まれていなかったかもしれません。
どうでしょう。里芋の力を少し信じてみたくなりましたか?                         
がんばった両親に孫芋を見せてあげられる予定はまったくありませんが、少しでも里芋にあやかれるよう、この秋はたくさん食べようと思います。
(鴨下 満)

『萩の地魚』
「名は体を表す」。年間250種類以上の魚の水揚げがある山口県萩市。
その萩の地魚界に彗星のごとく現れた魚、その名も“金太郎”。                       
フレンチの高級魚“ルージュ”の近縁種としてもてはやされ、今やかの有名な熊谷喜八シェフや奥田政行シェフに一目置かれるほど。しかし、その実体は捨てられてしまう雑魚同然の地味な魚だった!?
地魚界随一の出世魚となった裏には、敏腕道の駅駅長の存在が。 
そして、第二の金太郎を探そうと奮闘する、ある女性の姿に密着します。
果たしてその行方は・・・。金太郎のようにスクスク育てよ、萩の地魚出世魚物語。
(間宮 圭次郎)

プロデューサー

土橋正道

アシスタントプロデューサー

平田早季

ディレクター

前夷里枝
植田裕久
田中由美
細村舞衣
永田暁児
橋本倫
阿部賢実
岸元美江

リサーチ

北口由子

アシスタントディレクター

鴨下満
間宮圭次郎