遠くへ行きたい 2016年6月の放送
私事だが、我が家の墓石に他家の戒名が誤彫刻されるという椿事があった。もちろん墓石は改修してもらったが、その時に珍しいことがあることを知った。戦後作られたかろうと(納骨室)は、コンクリートを張り巡らせたものが多く排水が悪い。関東では、骨壷をそのままかろうとに入れる。そのため、墓石の周りから入り込んだ雨水で一杯になった後、徐々に水が引くので、かろうとが乾いていても骨壷の中は水浸しだった。ああ、先祖に申し訳ないことをした。もちろんかろうとは御影石で作り直し、排水が良くなるように地面の露出部分も作った。そして、やがて内部が骨壷で一杯になった時は、古い順にお骨を露出した土に還すのだ。
一方、我が家には京都にも墓がある。父のお骨の分骨埋葬に行ったとき、骨壷から出してかろうとに直接撒くことに驚いた。もともと京都では地下の地面が露出していて、亡くなると土に還してきたのだ。墓地の入口には骨壷置き場があり、管理人が回収してくれる。このように、埋葬方法ひとつをとっても、日本の風習は多岐多様だ。日本中を巡る「遠くへ行きたい」は、日本人は何を考えて暮らしてきたのかを探る旅でもある。
(土橋正道)