ネイチャースペシャル「愛しき日本の犬物語」-犬と人との絆をはぐくむ故郷の風景-

ネイチャースペシャル「愛しき日本の犬物語」-犬と人との絆をはぐくむ故郷の風景-

放送のおしらせ
2017年1月23日(月)19:00~20:55

一枚のモノクロ写真がある。庭の緑に水撒きをするために大人用の前掛けを付け、一人前の顔をして私がホースを握っている。木製の手作りの犬小屋は三角屋根の部分が赤だったが風雨に晒されてほとんど色が残っていない。祖父の家で飼っていた犬はラックという名前で茶色の毛艶のいいオスの柴犬だった。幼い私がアルマイトの器にエサを盛って恐る恐る近づくと不思議そうに小首をかしげて丸い目を大きく開き、短い尻尾をブンブンと振った。祖父は浴衣に下駄で犬の散歩へ行った。和服に割烹着姿の祖母がいつもエサを与えていた。夜鳴きもせず、さりとて押し売りや見知らぬセールスマンが入ろうとするとしきりに吠える優等生の番犬に違いなかった。しばらくしてラックが亡くなったことを話す祖母の目の淵が真っ赤だったことを鮮明に憶えている。犬小屋を見に行くと小さな鎖だけが残されて子ども心に主のいない寂寥感や家族を失った祖母の悲しみを言葉にしないようにつとめて明るく振る舞った。

空前のネコブームと聞いて、へそ曲がりはどうしても犬の番組を創りたいと思い立った。日本各地にいる日本犬を撮ろうと調べ始めたら、それはそれは深い世界だったことに驚いている。歴史もさることながら犬の飼い主さんたちが愛犬を語るときの瞳の輝きに幸せをもらっている。毎日の日課である犬の散歩道にもそれぞれの特色がある。それこそ日々の暮らしがある。大自然に囲まれ、理想的なさんぽみちで実に幸せに暮らしている犬もたくさんいることだろう。
スタッフはそれぞれの地域に生きる犬を取材している。それは“家族”の物語でもあるのだ。
(加藤義人)

語り     大杉 漣
ナレーション 山根 基世

企画・プロデューサー

加藤 義人

制作P

日髙 正吾

D

田中  徹
小松 知有