戦前、戦中、戦後にかけて、ある一人の人物の生き様を追う番組です。比島作戦に参加した陸軍飛行第３１戦隊の整備隊長だった故・杉山龍丸さん。名家に生まれた彼は、戦前、陸軍士官学校から陸軍航空技術学校へ転科となり、そこで軍人でありながら戦争中止を訴え、画策します。しかし、その願いもむなしくフィリピンの最前線へと送られました。
　一式戦闘機「隼」を操る飛行第３１戦隊は、故障した戦闘機を分解し、繋ぎ合わせ修理して、レイテ戦において最後まで戦闘機を保持した部隊です。日米航空機の生産技術の違い、司令部の目論見の甘さ、様々な不条理の中で、彼は日本の大義を冷静に見つめ闘い抜きます。しかし昭和２０年３月末、突然フィリピンからの脱出命令が下ります。これが後に、彼に深い悔恨を残すことになるのです。
　戦後、杉山龍丸さんが生涯をかけたのが、インドの砂漠緑化でした。先祖伝来の農園を全て売り払ってまでも、どうしてインドの緑化をしたのか？戦地で書かれた整備日誌、戦後書かれた手記や書簡をもとに、この疑問に迫っていければと思います。しかし７１年前のことは、謎ばかり。しばらく頭を悩ませる日々が続きそうです。
　（田中由美）