歌謡曲の王様伝説 阿久悠を殺す
『阿久悠を殺す』かなり挑戦的なタイトルになりました。このタイトルを提案して下さったのは、脚本を手掛けた一色伸幸さん(53歳)。26歳の時、一度だけ仕事で阿久さんにお世話になったことがあるそうで、「今回の脚本は、阿久さんへの恩返しです」と仰っていました。殺すことで恩返しとは…。本当に刺激的な方です。
物語は、1980年1月17日、直木賞発表当日の話。作詞家として活躍していた阿久さんが書いた小説『瀬戸内少年野球団』が直木賞で落選してしまいます。そして、この時期を境に、彼の詞の作風は一変しました。ピンクレディーや沢田研二などの華やかな世界から、八代亜紀や河島英五などの慈しむ世界へ。この時、彼の心中にどのような変化があったのか?それが、番組の見所です。そもそも、阿久さんは自分の内面を直接的に表現しても面白くないという信念から、歌詞やエッセイなどでは勿論、周囲の人々にも本心を語ることはほとんどありませんでした(阿久悠さんは2007年に他界)。しかし、当時、阿久さんの身の周りで起きた様々な出来事を、一色さんという一流の脚本家が分析することで、「クリエイターとしての葛藤や覚悟」が炙り出されてきました。それは長年、もの作りと真剣に向き合ってきた者同士だからこそ分かり合える特権なのかもしれません。事実、阿久さんのマネージャーをされていた方も、「なぜ、一色さんはこれほど阿久さんのことを知っているのか」と驚かれていました。さらに、タイトルについても「お任せします」と一言。こんな兵たちの世界を、1980年当時、1歳だった私が演出します。食らいついていきます。
(石井永二)
再放送
2014年4月29日(火) 23:15~24:15 NHK BSプレミアム
出演
吹越 満
三浦 貴大
ミ ム ラ
蔵下 穂波
趣 里
武田 義晴
二階堂 智
橋本じゅん
・
左 とん平
脚本
一色 伸幸
制作統括
松居径(NHK)
千葉聡史(NEP)
谷崎聡一郎(オフィス・トゥー・ワン)
小宮山 徹(オフィス・トゥー・ワン)