教科書にのせたい! 2011年8月分

※テレビマンユニオン担当回 
  
  8月23日(火) 19:00~20:54 放送 2時間スペシャル

  

教科書にのってはいないけど、教科書にのせたい!選りすぐりの知識を「国語」「算数」「理科」「社会」「体育」「音楽」など、科目ごとに発表。各分野の地のカリスマたちのトークとともに展開する知的バラエティ。VTR制作を担当する。


【スタッフコメント】

もしかすると弔辞にいいも悪いもないのかもしれない。
しかしとても心響く弔辞に遭遇した。しのつく雨が降りしきる元麻布の成田山善福寺。長門裕之氏の告別式。弔辞に立ったのは黒柳徹子さんだった。
その後、ニュースショ—でごく一部は伝えられていたが、報道されなかったところに、誠に秀逸な一節があった。黒柳さんは津川さんからこんな話を聞いた。
——ある時、長門さんと津川さんが久しぶりに二人で風呂に入った。
兄弟は互いの背中を流しあう。津川さんの背中を流しながら長門さんがつぶやく。
「もし、断崖絶壁で妻の洋子と雅彦が立っていて、どちらかを落とさなければならないとしたら、オレは洋子の背中を押すよ」。それを聞いて津川さんは、涙がこぼれた。数日して、洋子さんを始め家族が揃う機会があり、断崖から突き落とすのは誰ばなしになった。津川さんは嬉しくて、皆の前で長門さんに話しかけた。「兄ちゃんは、洋子さんとボクなら、ボクを助けて、洋子さんの背中を押すと言ったよね」それを聞いて長門さんがいきなり例の調子で怒鳴って切り返す。「オレが洋子にそんなことする訳ないだろう!」周囲がえっ!?とざわつき悩みに悩んだ長門さんはぽつりという。
「断崖絶壁からどちらかを落とせって言われたら⋯」
一同は次の長門の次の言葉を待つ。
「オレだったら⋯」
『オレだったら⋯』
「両方の背中を押して突き落とす」
しめやかな式がこのくだりのときだけ、自然と笑い声が出た。誰ともなく発する笑い声が一気に人の温もりある空間にかえていた。黒柳さんはけっして受けを狙って話たわけではない。ひたすら誠実に早口で語りかけている。告別式という厳粛な場に突然運ばれた断崖絶壁でどちらが突き落とされるかを真剣に議論しあう兄弟の描写。私が教科書にのせたい、のは弔辞には報道されないところに、白眉があり、言葉と言葉の間のほんのわずかな刹那の瞬間に人を思う心が温もりとして存在しているということである。黒柳さんという人の大きさを感じずにはいられなかった。(加藤義人)


司会

ウッチャンナンチャン
松本志のぶ

長澤智美
坂田能成
田中由美
佐藤宗明 ほか