食彩の王国 2016年7月

食彩の王国 2016年7月

 田園の稲が、青々として美しい季節になった。天候の良きを祈り、肥料を施し、次から次に伸びる雑草を抜き、虫害や鳥害を除け、困難と闘い続ける人々がこの瑞穂の風景を作っている。日本中を取材で駆け巡っていた頃、農家で初老の男性がつぶやいた言葉が忘れられない。「ああ、あと何回米が作れるだろう」。
 考えてみれば、米は年に一回しか収穫できない。農家の後継ぎとして、彼が責任を持つようになったのは幾つくらいだったのだろうか。仮に40歳とすれば、80歳まで働けたとして、40回しか採れないことになる。生涯を、収穫の数に置き換えられるということに驚いた。その時、母に「米は最後の一粒まで大切にしなさい」と教えられたことが、現実として胸に迫った。
 米だけではない。野菜も魚も畜産も、そんな一人の集積として食を支えてくれている。食前に、「あなたの命を私の命に換えさせていただきます」と祈るのは、ただ殺生のことだけではない。その食材を我々に届けるために、力を尽くしてくれた人への感謝も込められているのだ。「食彩の王国」も、「いただきます」の心を大切にしたい。
(土橋正道)

語り

薬師丸ひろ子

放送予定

    OA日     テーマ     担当D
#635 7月 2日 : 明石だこ    前夷里枝
#636 7月 9日 : 鹿児島・黒肉  ※VIVIA
#637 7月16日 : 麩       橋村知曉
#638 7月23日 : うなぎ     ※VIVIA
#639 7月30日 : スルメイカ   細村舞依

7月のテレビマンユニオン 担当回は・・・ 

『タコ』
うら若き乙女のごとく頬を真っ赤に染めるのは、夏の恋人“明石のたこ”です。恥ずかしがり屋でキレイ好き、タコ壺から覗かせるつぶらな瞳を一目見たときから、僕はもう君の虜! さらに明石の台所・魚の棚で魅せる、柔らか煮に干しダコ、極めつけはその魅力を全身で表現した ぺったん焼まで・・・。この愛、最早全身でぶつかっていくしかない。そこへ現れた最大のライバル、球界の二大スターとは!?絶対に譲れない、夏が来る。       
(間宮圭次郎)

『麩』
“ゴーヤ”と言えばチャンプルー、“タピオカ”と言えばミルクティーと同じように、“お麩”と言えばお吸い物だと思い込んでいました。しかし、金沢のおでんと言えば、“車麩”という輪になったお麩が定番の具材。加賀藩前田家ゆかりの伝統料理、治部煮(じぶに)には、すだれで型をつけた“すだれ麩”を使うのがしきたりです。お麩は名脇役ではなく、料理の主役。金沢で出会った、お麩を愛する人たちのドラマです。 
(鴨下満)

『スルメイカ』
キラキラと川のせせらぎのように夜空に流れる天の川。その光に導かれるようにして来るは、織姫?彦星?いえいえ、あれはスルメイカです。煌煌と照らし出されたイカ釣り漁船の明かりに集まるスルメイカは、まるで函館山から見える100万ドルの夜景を眺めにやってくる恋人たちのよう。きっと、夜景をバックにスルメイカを食べる スタイルが流行すること間違いなし!?そして聞いてみてください、思い出のキスの味を・・・。
(間宮圭次郎)

プロデューサー

土橋正道

アシスタントプロデューサー

平田早季

ディレクター

前夷里枝
植田裕久
橋本倫
永田暁児
細村舞衣
橋村知曉
田中由美
阿部賢実
岸元美江

リサーチ

北口由子

アシスタントディレクター

細村舞依
鴨下満
間宮圭次郎