食彩の王国 2016年6月

食彩の王国 2016年6月

 田園の稲が、青々として美しい季節になった。天候の良きを祈り、肥料を施し、次から次に伸びる雑草を抜き、虫害や鳥害を除け、困難と闘い続ける人々がこの瑞穂の風景を作っている。日本中を取材で駆け巡っていた頃、農家で初老の男性がつぶやいた言葉が忘れられない。「ああ、あと何回米が作れるだろう」。
 考えてみれば、米は年に一回しか収穫できない。農家の後継ぎとして、彼が責任を持つようになったのは幾つくらいだったのだろうか。仮に40歳とすれば、80歳まで働けたとして、40回しか採れないことになる。生涯を、収穫の数に置き換えられるということに驚いた。その時、母に「米は最後の一粒まで大切にしなさい」と教えられたことが、現実として胸に迫った。
 米だけではない。野菜も魚も畜産も、そんな一人の集積として食を支えてくれている。食前に、「あなたの命を私の命に換えさせていただきます」と祈るのは、ただ殺生のことだけではない。その食材を我々に届けるために、力を尽くしてくれた人への感謝も込められているのだ。「食彩の王国」も、「いただきます」の心を大切にしたい。
(土橋正道)

語り

薬師丸ひろ子

放送予定

    OA日     テーマ     担当D
#631 6月 4日 : 生クリーム   中西朋
#632 6月11日 : アスパラガス  ※VIVIA
#633 6月18日 : トビウオ    橋本倫
#634 6月25日 : ウニ      ※VIVIA

6月のテレビマンユニオン担当回は・・・ 

『キッチンの魔法使い 魅惑の生クリーム物語』
フワッとホイップしてケーキに飾るだけで心躍る「生クリーム」が、日本の味を進化させています。元々生クリーム好きな日本人。実は、フワフワのスポンジと合わせたショートケーキは日本人の発明したスイーツだったんです。今、大人気の堂島ロールの秘密に迫ります。今までにない組み合わせで和食の新たな道を切り開いた鬼才・山下春幸シェフ今回合わせるのは…なんと、かつおと昆布と生クリーム。どんなコラボが生まれるかのお楽しみ!海外からの客が増え、日本人の味覚も変化し続ける中、新たな美味しさを追求して作られた和食の姿とは? 万能調味料としての生クリームの物語が始まります!
(徳丸あす香)

『空飛ぶ旨味!屋久島トビウオ物語』
太古の自然が眠る、もののけたちの楽園、屋久島。ここでは,“おすそわけ”の文化が息づいていました。漁師は活きのいいトビウオを、農家は新鮮な玉ねぎやズッキーニを、近所の方々へあげて回るのです。もちろん、もらった方もお返しを忘れません。頂いたものを生かした料理を、お礼におすそわけ。そんな、血の通った物々交換で島民たちは繋がっていました。住む場所や環境は人それぞれですが、まるでサンとアシタカのように、共に生きているのです。ヤックルには乗れませんが、軽トラに乗ってトビウオを届けに行きます。島で描かれるあたたかな人間模様。ご覧ください。
(鴨下満)

プロデューサー

土橋正道

アシスタントプロデュサー

平田早季

ディレクター

前夷里枝
植田裕久
橋本倫
中西朋
田中由美
阿部賢実
岸元美江
永田暁児 

リサーチ

北口由子

アシスタントディレクター

徳丸あす香
細村舞依
鴨下満
間宮圭次郎