文化庁メディア芸術祭富山展 「トヤマウォーカー」
つくづく懲りないな、と思う。
去年の今ごろは、帯広で巨大な作品を展示するために屋根を求めて右往左往していた。泣きそうだったし、実際ちょっと泣いた記憶がある。
で、今年は富山で開催する。なぜ富山か?
今年の受賞作品は、あのGoogleが世界を熱狂させている『Ingress』や、愉快なアートディレクターが始めた『のらもじ発見プロジェクト』など、奇しくも歩いて街を再発見する作品が多い。だったら、街に作品を点在させ、歩いて見て回るのが良いだろう。そんな企画に相応しい街を求めてリサーチを開始した。
バンクーバーやパリ、ポートランドと並び、コンパクトシティの先進モデル都市にも選出されている富山市。街の中心に行政や商業施設が集められ、それらをポートラム(路面電車のカッコイイやつ)が結ぶ。おまけに海(富山湾)や山(立山連峰)へのアクセスも至近。きっと魚も美味しいだろう。北陸新幹線だって開通する。良い、すごく良い。富山を見つけたことに、僕らは小躍りして喜んだ。
問題がひとつあった。我々スタッフの中に富山出身者はおろか、知り合いすらいないのだった。唯一浮かんできたのが、スタッフ(私)の妻の元同僚の夫が富山大学で経理関係の仕事をしているらしい、という恐ろしく細い縁だった。
本来、メディア芸術祭地方展は、その地方の美術館やイベント会社が運営するもので、ハコも地縁もない東京の映像制作会社が担当することは想定されていない。
だから我々は細い糸をたどり、人を訪ね、展示スペースを探して歩き、何十回と同じ説明を富山の方々に繰り返した。
結果、私のデスクの上に束ねられた富山関係の名刺の厚みは5センチを超える。
「友達が増える、でいいんじゃないですかね」
昨年の帯広展で開催したトークイベントで、ゲストの『水曜どうでしょう』のディレクター陣に「結局、メディア芸術って何ですか?」と問われた審査委員の飯田和敏さんの言葉だ。
僕らが懲りない理由も、これなのかも知れない。
(杉本友昭)
《会 期》 2015年10月8日(木)~25日(日)
《開催会場》 TOYAMAキラリ(富山市ガラス美術館 ギャラリー/富山市立図書館本館 4F)
グランドプラザ
中央通り商店街空き店舗
フォルツァ総曲輪
《観覧料》 無料
《主 催》 文化庁
《企画・運営》 文化庁メディア芸術祭富山展事務局(株式会社テレビマンユニオン)
《後 援》 富山市 富山大学 株式会社まちづくりとやま
《協 力》 富山まちなか研究室MAG.net
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