輝く女 杏
「手水舎(ちょうずや)」「石榴(ざくろ)口」「昔とった杵柄」・・・?
会話のなかに、耳慣れない言葉やことわざが、さらりと出てくる。この人を取材する現場では、毎度焦りを覚え、スマートフォンの検索機能のありがたさが身に沁みます。
女優・モデルとして活躍する杏(あん)さんは、お父さんが俳優の渡辺謙さんです。
彼女には、独特で不思議なことばの使い方に脳をフル回転させられたり、いろんな日本語の意味を知っているなぁと関心させられたりします。
・好きなことは?という質問をすると、「いろんな“四角い枠”のなかに収まってゆくのが、すごく楽しい」。
モデルや女優の仕事、絵や文章を描くこと、この4つ(写真、映像、キャンバス、紙面)を、“四角い枠”という
言い方でくくってしまう。
・春の夜、ファッションショーの舞台裏、着替えでバタバタしている中、かすんだ月を見あげてふと
「朧な感じでイイですね」。(→朧月夜は、柔らかく霞んで見える、春の夜の月のこと)
自然にそんな言葉が出てしまうくらい、心から日本の文化が好きなんだなと感じます。特に、昔のニッポンが。その情報量と過去を見る目は、まさに「歴女」代表。以前、この流行語大賞の代表に選ばれたわけがわかりました。
杏さんはこの秋から、『あまちゃん』につづく朝ドラ次回作『ごちそうさん』のヒロインを演じます。主な舞台となる大阪のことや、時代背景や当時の料理について、雑学書から専門書まですでに20冊以上を読破。徹底して知れば知るほど必ず役立つ、ただ演じる前にぜんぶ忘れる、という彼女の役作りを追いかけます。さらにオフの日、三千メートル級の山登りに挑む杏さんにも同行します。
『輝く女』という“うごく四角い枠”で、杏さんはどんな姿を見せるでしょうか。
(下口谷 充)
演出
下口谷 充
撮影
岡本亮 森屋進 池村泰貴
編集(後編のみ)
宮島亜紀
リサーチャー
吉本珠代
プロデューサー
梛木泰西