中国王朝 英雄たちの伝説「皇帝が倒れるとき」

再放送
2021年12月31日(金)9:45~10:44
第1集「反逆者 三国志の真相~黄巾の乱から曹操へ~」

出演 佐々木蔵之介
   浅田次郎

僕には何度読もうとしてもどうしても読めなかった小説がいくつかあるのですが、その代表が吉川英治の『三国志』です。
中高のみぎり周りで流行り、手を出して見るのですが読み進められない。何でかなと思ったら最近気付きました。ゲームやらマンガやらで阿部少年的独自史観三国志が出来上がっていたからです。
俺の趙雲がこんなこと言うかな?とか、夏侯惇もっと出してくれ、とか、中ニ病まっしぐらで勝手に抱いた「史観」が、吉川節を堪能できない10代の僕を作っていたようです。
正直に告白すれば、実家にあった横山光輝のマンガ『三国志』の激レアな女性の更に激レアな艶ぽいシーンが目覚めだった気もしますし、ファミコンでは郭嘉や魏延といったクセモノを重用することでオレって名君だとか思ってた小学生でした。アホです。

…と、それぞれがそれぞれの物語を抱きやすい三国志。しかし当たり前ですが、歴史でほんとうに起きたことは、1つだけです。果たしてどんな1つの史実が紡がれたのか?
今回はそれを、黄巾の乱から説き起こします。
三国志好きの人には「え?黄巾の乱からって当たり前じゃん」と言われるかも知れませんが、物語だと、ほとんど劉備や曹操を登場させるためのツマでしか無いですよね。それはたぶん綺羅星のごときキャラたちに比べ、黄巾の乱はキャラが少ないから、描きにくいから。でも、名もなき民衆こそが、時代を変えます。大量破壊兵器も無い時代、最大の力は「数」でしたから。

話が飛びますが、ハインリヒの法則(1つの労働災害の背景に29の軽い事故があり300の見えない異常があるという法則)の「数」のバランスというのはあらゆる所に当てはまる気がしていて、これまで描かれてきた三国志はもっぱら中間の「29」ばかりを描いてきたように思います。
誰が「1」になるかを競って戦った時代ではあるのですが、その彼らが治めようとした「300」のことは描かれなさ過ぎる。
でも、先ほども言ったように「数」がモノを言う時代、1になる為に、300に向き合わなかったワケはありません。
そんな目線で今回改めて見つめるのが、あの時代最も「1」に近づいた男、曹操。
恩人を殺したり裏切ったりの悪の権化として物語では描かれ、それがまた魅力にもなってきた曹操ですが、今回はそんな彼がなぜ勝っていったのか。その秘密を、300、つまり民との向き合い方に絞って徹底的に見つめます。
幸い、2007年に曹操の墓が、2001年からは曹操の都が、それぞれ中国で発掘開始しており、曹操の、物語で描かれた悪の魅力を凌駕する、素顔の魅力が浮かび上がりつつあります。

そんなこんなでお届けします今回の番組。
旅人は佐々木蔵之介さん。京都のご出身の佐々木さんだからこそのビビビッとくる曹操ポイントもあり、演技にもにじみ出るあの優しさと共感力で迫って頂いた民衆の声もあり。
本当にご多用の中頂いたロケ日数を駆使して中国全土2万キロ位を移動しまくって来ました。
ぜひご覧頂ければ幸いです。
阿部修英

【これまでの再放送】NHK BSプレミアム
第1集「反逆者 三国志の真相~黄巾の乱から曹操へ~」
 2019年7月17日(水)22:00~23:0
 2018年5月5日(土・祝)13:30~14:30
第3集「反逆者 挫折と革命 ~太平天国の乱から孫文へ~」
 2019年7月31日(水)22:00~23:00
 2018年5月5日(土・祝)15:30~16:30

ディレクター

阿部修英

アシスタント・ディレクター

西村勝浩

編集

大川義弘

プロデューサー

國分禎雄