アナザーストーリーズ 運命の分岐点  「日本が揺れた!消費税導入の舞台裏」

アナザーストーリーズ 運命の分岐点 「日本が揺れた!消費税導入の舞台裏」

再放送のお知らせ
2019年10月1日(火)21:00~/7日(月)23:45~

僕は1991年に生まれた。平成3年。今年で27歳。
小学校6年生の頃、学校で「税について」という題で作文を書かされ、なんとかとかいう(正確な名前は失念してしまったが)作文賞を貰った。2000円くらいの図書券を貰って、漫画を買いに行ったのを覚えている。
消費税が導入されたのは1989年4月1日。僕が生まれる2年前のこと。
物心つく頃には5%になっていて、僕の消費税のイメージは5円玉である。ディレクターの佐藤憲正さんは昭和42年生まれのおっさんなので、1円玉が消費税のイメージだという。

大学・大学院と美術を学んでいて、僕の興味はもっぱら映画と文学であった。
もちろん、政治やそれによって起きていることには色々な思いもあったが、政治家や官僚の方々とはそういう意味で縁もゆかりもなかったので、なにか遠くのところで起こっていることだと感じていた。
入社して配属されたこの「消費税導入」というテーマに対し、自分がどう貢献できるのかということは非常に不安に思っていた。
最初の3つの清水信次氏、平野貞夫氏、薄井信明氏のロケが終わって、次の日から僕はひとりで取材に向かった。
「消費税」とその2年前1987年頃の「売上税」。
この2つを念頭に、当時の写真を集めてそこに書かれている団体に全てに電話した。
約30年前のことなので僕なりの苦労はあったが、なんとか消費税導入に色々な想いを持っている人々にたどり着き、お会いすることができた。売上税の反対シュプレヒコールを指揮した樋口修一氏と東京ニットファッション工業組合の方々、消費税導入までの約100日間を不眠不休で働き日本に何台とあるレジを消費税対応させた寺岡精工の方々、まだ消費税を還元しようとセールするお茶屋さん。
撮影はできなかったけれど色々な人々に当時の想いを聞かせて頂きました。この場で御礼させて頂きたいです、ありがとうございます。

1987年の中曽根政権「売上税」、1989年の竹下政権「消費税」。
なぜ消費税はこのように日本に浸透し残り、売上税は今では名前すら聞かなくなったのか?通らなかったのか?
「消費税導入」というひとつのテーマはアンサンブルな群像劇なのだ!ということを分からされた。ひとつのことに色々な人々が関わっていて、それぞれが自ら思う「正しさ」でそれを良い方向に傾けようと動いている。きちんと互い同士で会話し対話になる、それがコミュニケーション。それが大切なこと。当たり前のことだが、フィジカルにそれが行われていた時代が「消費税導入」から見えてくる。

しかし今の状況において、対話はきちんと交わされているのだろうか?
政治でも、学校でも、仕事でも、友人関係でも恋人関係でも多くの場合、会話だけで止まっている気がしてしまうのだが……
そういうなにか僕たちが忘れているなにかを、あの人々は持っていたのかもしれない。見てくださる方々にもただ「消費税導入」という一見つまらなさそうなヒストリーとしてではなく、様々なストーリーとして楽しんで頂けたら嬉しいことであります。
(池田光輝)

ナビゲーター

沢尻エリカ

ナレーション

濱田 岳

演出 

佐藤憲正

演出補

池田光輝

プロデューサー

髙城朝子

ゼネラルプロデューサー

田中直人