「焼肉ドラゴン」などの作品で知られ、「在日」の劇作家で演出家の鄭 義信（チョン ウィシン）さんがこう語ってくれました。「在日も4世5世の時代となり、在日という言葉そのものがなくなる日が近い。日韓関係が変わりゆく時代だからこそ、見せたい、残したい物語がある」と。そして彼は、ある舞台を作りはじめました。私たちは、そんな鄭さんに注目したいと思います。日韓の狭間で生きてきたからこそ、鄭さんは独特の歴史観を持っています。加害者と被害者という二元論では割り切れない「何か」を鄭さんは感じとっています。国境も、善悪の既成概念も、鄭さんはやすやすと飛び越えます。時代の風を真正面から受け、表現に変えていくのです。私たちは、鄭さんを主人公に、変わりゆく日韓関係を描き出そうと思います。
（中村哲夫）