アナザーストーリーズ 運命の分岐点「1969バリケードの中のジャズ 熱狂とその後の50年」
70年安保闘争前夜。早稲田大学はセクト間抗争の修羅場と化していた。そんな危険地帯で命がけのライブが行われた。革マルの牙城だった大隈講堂からグランドピアノを盗み出し、地雷原さながらの本部構内を横切り、民青が支配する4号館へ。そこに山下洋輔トリオが乱入し、過激派学生たちが取り囲む中でフリージャズのライブ演奏を決行したのだ。そもそもこんな暴挙を企んだのは田原総一朗。「あんた、どんな死に方をしたい?」そう訊ねた田原に山下は答えた。「ピアノを弾きながら死ねたら本望だ」全てはこの一言から始まった。ピアノが破壊されても、学生たちが衝突しても、機動隊が導入されてもおかしくなかった。暴力の渦中で実現した伝説的ライブと、53年後に行われた「村上春樹 presents 山下洋輔再乱入ライブ」。半世紀を結ぶ“乱入”の物語をお送りします。
(田中直人)