アナザーストーリーズ 運命の分岐点 戦火のフライト〜日本人を救ったトルコの翼〜
現在も中東では、多くの犠牲者を生む混乱が続いています。しかし、1985年にも中東イランで多くの日本人が取り残され、あわや戦争に巻き込まれるという混乱があったことを知っていますか? 当時はイラン・イラク戦争の最中、戦闘が突如、激化し、首都テヘランにいた日本の民間人にも命の危険が迫る事態となったのです。戦地から彼らを救い出したのは、なんとトルコの航空機でした。なぜ戦争の当事国でもないトルコが日本人の命を救ったのか? 今回の「アナザーストリーズ」では、40年前、この救出に関わった当事者を取材し、これまで語られてこなかった舞台裏に3つの視点から迫ります。
第1の視点は、戦地に取り残された日本人、高星輝次さん。現場にいた者でしか知り得ない生々しい状況を語っていただきました。この時代、多くの日本の企業戦士が世界各地で活躍していたように、高星さんもエンジニアとしてテヘランに派遣され、働いていました。なぜその街が急転直下、戦場となったのか? 瓦礫と化していく街から逃れようとする日本人たちの混乱と奮闘が明かされます。
第2の視点は、日本人の救出に向かった元トルコ航空のパイロット、コライ・ギョクベルクさん。トルコ、イスタンブールにあるご自宅まで伺い、インタビュー取材させていただきました。フライトでは、想定外の出来事も! 彼らは非常事態にどんな対応を取り、救出を成功させたのか?
救援機に乗り込んだのはパイロットだけではありません。アイシェ・オザルプさんとミュゲ・サセルさんら客室乗務員の方々も。当時20代〜30代の女性8人が志願して、救援機に乗り込みました。彼女たちが目の当たりにした、緊迫する機内の状況が語られます。
救援機派遣を命じたのは、当時のトルコ首相トゥルグット・オザル。第3の視点は、かつてオザル首相の番記者だったジャーナリスト、エルダル・ギュベンさんです。オザル首相に夜を徹して張り付く、その姿から“リトル・モンスター”と恐れられ、愛された人物です。なぜ戦争の当事国でもないトルコが危険な紛争地に救援機を飛ばしてまで日本人を救ったのか?その背景には、オザル首相が“親友”と呼んだある日本の民間人の存在があったことを明かしてくれました。救援機派遣へとつながる二人の友情秘話とは?
今からちょうど40年前のトルコによる日本人の救出劇は、多くの方が記憶にない出来事かもしれません。しかし、中東における混乱が今なお続き、他国との向き合い方が不透明になりつつある今だからこそ、ぜひ、ご覧になって頂きたいと願っています。
(野村明浩)
※NHK ONEサイト「担当Dから見どころ紹介」より