アナザーストーリーズ 運命の分岐点 サザエさん~80年愛される家族の秘密~
あなたの伯母さんはどんな人ですか?
私は年に一度しか会えていないが、もし伯母と同居していたら、親とは違う絶妙な距離感で、独特の親近感と一種の憧れを抱く、不思議な関係性になることだろう。
本作1人目の証言者は、幼い頃から伯母と同居し、しかもその伯母があの国民的人気漫画『サザエさん』の作者だという人物だ。
『サザエさん』の生みの親・長谷川町子は滅多にメディアに出ない上、社交も避け、「あまり喋らない静かでシャイな人」という証言も多い。そんな中、そんな世評とは全く違う、家族にしか見せなかった素顔を知る人物が、実の姪として同居した長谷川たかこだ。彼女は、『サザエさん』連載中の長谷川家の日々を目撃している。6歳で父を亡くしてから、一つ屋根の下で暮らしたたかこと町子の関係性は、一般的な伯母と姪の関係性よりずっと濃いものだっただろう。
「町子おばとは不思議な関係性だった。私のことをすごく可愛がってくれたし、その関係性が好きだった」
今、町子に「可愛がられていた」と迷いなく言えるのは、日本中探しても彼女だけだ。実際に町子と共に送った日々がどんなものだったかは、ぜひ本編をご覧ください。
サザエさんが誰もが知る存在となったのには、アニメ版の影響も欠かせない。1969年10月5日から現在まで変わらず、日曜の18時半から30分間、放送され続けている。「世界で最も長く放映されているテレビアニメ番組」「同一の放送時間で最も長く続いている番組」としてギネス記録を保持している。
しかし、それを最初にアニメ化する時のことを想像してみてほしい。第一『サザエさん』はストーリー漫画ではないのだ。ストーリー漫画であれば原作に沿って話を展開していけるが、『サザエさん』は毎日4コマのみ、起承転結で完結してしまう。そのままアニメにしては一瞬で終わってしまう。
その裏側を語ってくれるのは、アニメ『サザエさん』第一回放送から携わり、のちに作画監督、プロデューサーも務める毛内節夫。現在のアニメ『サザエさん』の世界観が確立するまでの過程で、原作者である長谷川町子からある重要なヒントを授けられた。
漫画家・こうの史代。彼女は『この世界の片隅に』を描くにあたって、町子の自伝エッセイ『サザエさんうちあけ話』の中のあるエピソードを参考にしている。こうのは世代の離れた町子から何を受け取ったのか?
町子にとって戦争の季節は、デビュー後の10年間。まだまだ作風を模索する時期だ。そんな時期がまるまる戦争中だった。全ての表現者がプロパガンダを求められ、検閲を受けた時代。町子も例外ではない。後のインタビューで、「せっかくのアイデアをめちゃめちゃに壊されてしまったのは、ほんとうに嫌でした」と語っている。
そんな中で描かれた知られざる仕事の一つ、『翼賛一家大和さん』は大政翼賛会の意向を受けた作品だ。そんな中で町子が貫いたものが、のちの『サザエさん』にも通じてくる。『翼賛一家』から『サザエさん』一家へ。そのミッシングリンクをこうのが解き明かす。
日に日に世界が悪くなる。戦争があからさまに近づいてくる。そんな現実に窒息しそうになる今こそ、私たちが長谷川町子から受け取れるものは大きい。ぜひご覧ください。
(斉藤彩香)
※NHK ONEサイト「担当Dから見どころ紹介」より
初回放送 2026年3月28日(土)23:20~24:05【NHK BS8K】