
2月24日ロシアとウクライナの戦争が始まりました。そして今年も世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっています。今こうしている間も、日々歴史が作られています。ウクライナについては一刻も早く平和が戻るようにと思わざるを得ません。いったい後の時代の歴史家はここ数年の出来事をどう書くのでしょうか。
世界ふしぎ発見!は1986年にスタートし今年で36年を迎えましたが、その間にもこのところ起きているような世界史的な大事件がいくつもありました。今日はそんなお話をしたいと思います。
番組がスタートした年、私が最初に取材で訪れた国はルーマニアでした。当時はチャウシェスク独裁政権の終わり頃でした。ロケハンで同国に着いた当日、文化担当の偉い人のレクチャーがありました。その時彼が教えてくれた話では、ルーマニアは歴史的に大きくはモルダヴィア、ワラキアとトランシルバニアの三つの地域に分かれ(正確にはもう一つドブロジャがある)、モルダヴィア・ワラキアとトランシルバニアにはどうやら地域差があったらしい。トランシルバニアにはドイツ系の人々によって作られた町もあります。第二次世界大戦中は最初ナチス・ドイツに協力し枢軸国側でしたが、その後ソ連の進出で連合国側になったため、彼の話では「枢軸国と連合国の両方から爆撃を受けた唯一の国」なのだそうです。その後のロケハンでは当時の社会主義国の常として取材に立ち会う役目の役人がついてきました。首都のブカレスト周辺では赤いスカーフを首に巻いた子供達の歓迎の踊りなど当時の社会主義国らしい趣向が盛りだくさんだった反面、トランシルバニアに入ったとたん車はどこにも停まらずものすごい勢いで移動し始めました。どうしても見たい教会があったので強く頼んで停めてもらい内部をロケハンしていた時、一人の男性が役人の目を盗んでそっと近づいてきて英語で言いました。「この教会はもうじきなくなるんだ」と。後になって分かったことですがチャウシェスク政権はトランシルバニアの伝統的な町々を破壊し、人々をコンクリートで作った新しい集落に移そうとしていたそうです。しかしブルドーザーの燃料が足りず計画は頓挫した、という笑い話があります。
その3年後、1989年にトランシルバニアの町に端を発する国民の民主化運動(ルーマニア革命)が起こってチャウシェスク政権が倒れ、平和なヨーロッパの国になっています。東ドイツ取材で今はないベルリンの壁を越えたこともあります。文化大革命が終わった直後、上海の南京路で自転車の川を見ていた私には今の中国は別の国に見えます。
36年の間に、後々世界史の教科書に載るような出来事がいくつも起こりました。そして世界ふしぎ発見!は今年も、そんな「リアル世界史」の中で制作を続けています。
(大塚修一)
司会 草野仁
レギュラー解答者 黒柳徹子 野々村真
アシスタント 出水麻衣(TBSアナウンサー)