情熱大陸 プロ車いすテニスプレーヤー/小田凱人
情熱大陸 プロ車いすテニスプレーヤー/小田凱人
情熱大陸 プロ車いすテニスプレーヤー/小田凱人

情熱大陸 プロ車いすテニスプレーヤー/小田凱人

本当に20歳!? 妥協を知らず、自らの頭で考え抜く、“世界一”の思考

車いすテニス界を席巻する若き王者、小田選手。彼を取材して何より驚かされるのは、その内面からにじみでる独自の考え方だ。
スポーツ界でよく語られる「負けから学ぶ」という考えに、彼は明確に抵抗を示す。「負けることを生かしてプラスに持っていくのは嫌だ。それは逃げである」と言い切るのだ。負けをポジティブに捉えることは、悔しさを消し去り、一時的に心を楽にする「その場しのぎ」に過ぎない。常に「勝ちたい」という挑戦者のマインドを持ち、マイナスの感情をあえて自分の中に生々しく残し続けること。それこそが、頂点に君臨し続けるための原動力なのだという。幼い頃学校の授業で道徳が得意だったという小田選手らしさを感じた。
その達観した視座はパラアスリートに向けられる「可哀想」という憐憫の目への反発にも表れている。「人は誰でも弱いところを持っている。僕にはそれがたまたま誰もが何も言えなくなる病気だっただけ。障害を売りにするのはカッコ悪い」。
そして、その思考法は「見られているアスリート」としてのスタンスに最も色濃く表れる。ウィンブルドンでの「白い車いす」での登場はその象徴だ。「勝つだけでなく、車いすテニス界に足跡を残すことが大事。たとえ負けても、何かを残して終わる方が僕にとって価値がある」。引退間際に言葉を残す選手は多いが、小田選手は違う。「まだ20歳の僕が今の段階で言うことにオリジナリティがある。若い今だからこそあえて、リスクや批判を承知で行動したいし、発信し、表現したい」。あえて若いとされる今こそ、責任や負担を背負えるだけ背負った上で、自らの言葉を残すことに彼は強い価値を見出している。
驚くことに、これまで読書をしてこなかったという小田選手が先日、初めて本屋へ足を運んだときにたまたま帯同できた。手に取ったのは新渡戸稲造の『武士道』。自身がいま感じ考えていることと見事に共鳴したからだという。年上の選手やコーチや関係者という大人たちとの対話で磨かれた早熟な思考は、活字という刺激を得てさらに成熟するだろう。小田選手が今後どのような振る舞いで世間をにぎわせてくれるのか、期待せずにはいられない。
(下口谷)

P&D 

下口谷充

編集

柏崎 源

プロデューサー

渡邊美幸(MBS)