最後の講義「岩下志麻」
「打ち合わせをするからと言って、引き受けたとは思わないでほしい」岩下さんはそんなお返事をくださり、最初の打ち合わせが始まった。最後の講義のような大仰なタイトルから自分が出演することにどんな意味を見出せば良いのか、オファーは嬉しいけれど、戸惑っている、そんな気持ちを語ってくださったのだが、聞いていくと、次々と核心が現れていく。それは強い個性から生まれていくものというよりは、好奇心の強さと正直な世界観から発せられているようだった。映画という魔物を夫である篠田正浩監督と二人で魔物退治している人生だというが、魔物と60年以上ずーっと付き合うとそれが伝播していくのは、この業界にいる人ならわかると思う。
「魔物」をぜひ、ご覧頂きたい。
(長澤智美)