食彩の王国 2023年8月
「食」の持続可能性
日本は海洋資源大国だと言われて来たが、水産資源の減少は思いのほか深刻だ。2014年には太平洋クロマグロが絶滅危惧種に指定された。そこで体重30kg未満の未成魚の漁獲枠を減じるなど、様々な対策が取られている。そのような事態を見越した近畿大学では、1970年からクロマグロの養殖の研究を始め、2002年には完全養殖に成功している。日本人にとってクロマグロはなくてはならない。著名なシェフたちの間にも、可能な限り持続可能な漁法で獲られたサステナブルシーフードを使うというシェフが増えてきた。一方、大西洋クロマグロは未成魚の捕獲は全面的に禁じている。ところが、宮城県気仙沼港の第一昭福丸は、世界で初めて大西洋クロマグロ漁で「海のエコラベル」を取得した。これは国連が定めたSDG‘sの中で、海の豊かさを守ろうという目標に貢献しているという証だが、電子タグによる厳密な漁獲管理、ウミガメや海鳥を混獲を防ぐなどの取り決めを守る非効率な漁だ。しかしその結果、これまでクロマグロを食べることを禁止していた国や、国内の外資系のホテルでも使われるようになったというから、世界の関心はただ事ではない。当番組でも、持続可能な食のありかたを考え続けている。
(土橋正道)