ズームバック×オチアイ 落合陽一、オードリー・タンについに会う。

ズームバック×オチアイ 落合陽一、オードリー・タンについに会う。

出演 落合陽一
   オードリー・タン

「1時間伸ばしましょう」

2020年、五輪が延期した夏に初対談、3時間。
2022年始、ロシアがウクライナに攻め込む1ヶ月前の冬に再び対談。これも3時間。
そして2023年、3度目にして「ついに」出会うことが決まった、
番組編集長・落合陽一さんと、台湾のデジタル担当閣僚・オードリータンさん。
ただオードリーさんは3年の間に台湾での責任がどんどん重くなり、
1度目2度目のように3時間の時間は絶対に割けない、1時間が関の山だと、秘書さんからはキツく言われた。

「そこを何とか」と交渉し、1時間半に。
それでもいつもの半分。
2022年に爆発的な進化を遂げたAIのことや、前回の対談の直後に起きた戦争のことなど、
山ほど2人に話して欲しいことはあるのに。
司会を担務する僕は、自分で書いた進行台本のどこなら削れるか、そればかり悩んで、「その日」を迎えた。

そうしたら。

落合さんが出会うより前にまず挨拶に伺った僕に
オードリーさんは言った。冒頭の言葉を。

「せっかくヨーイチさんと話せるのだし、
 あなたが事前に送ってくれたアジェンダは
 どれもとても興味深いものばかりでした。
 だから、1時間伸ばしましょう。」

曇る秘書さんの顔。何をどう調整してくれたのかわからない。だけどオードリーさんはこうと決めたら変わらない人だということは秘書さんが一番分かっている。
ありがとうございます。
心から感謝と、ならばこそやらねばならないミッションに奮い立つ。

―――かくして始まった、2時間半の濃密な時間。

落合さんはリモートでもリアルでも切れ味と情報量が一切変わらない人なのだけど、
2人が出会う瞬間はそれはそれはマジックがはたらいた瞬間となった。
向かう車中で落合さんは「リモートじゃない、"高画質"の"実寸大"のオードリーと会えるのが楽しみ。どの位の背の高さかな」といかにも科学者らしい言葉を語っていたけれど、
その言葉を聞いていたかのように、オードリーさんも出会った瞬間、「高画質で会えましたね!実寸大で!」と返す。あなたたち脳がつながっているの?と思うほど、一瞬で生まれる知の化学反応。

そこから先、1分1秒も無駄にしたくなくて
僕はどんどんテーマを振り、問い続けた。

Stable Diffusion、Midjourney、ChatGPT、、2022年に恐ろしき勢いで「生えた」AIたちと、AIがどこまで私たちの暮らしを、社会システムを変えるかについて。

各国がデータ戦略を重んじる中、立ち遅れていた(しかしようやく本腰入れ始めた)日本のデジタル社会保障と、先を行く台湾の取り組みについて。

そして開戦から1年が経とうとしている中でも未だ終わりの気配がない戦争と、国際間の緊張。事態を切り拓くカギとなるかもしれない「宇宙」について。

コロナ禍が始まった3年前にはこんなテーマを話すとは思わなかった、しかし3年のコロナ禍を経て2023年の今だからこそ確実に話せるようになった話題ばかり。
AI?関係ない。デジタル社会保障?何それ。とはもう言っていられない、これを知らないとこの先は闇だらけだし、逆にこれを知れば、闇にひびが割れて光が差してきそうな話。まさに、混迷とお先真っ暗のいまを切り拓く、逆転のシナリオ。
2人は、僕が問うのを待つのも惜しいとばかり、2人にしか投げられない豪速球と魔球を対話のなかで投げ続けた。このスピード感とマジック感が、2023年だ!

これを書いているのは、オフライン編集を終えた日。
番組というのはなるべく早く完成させて次へと向かうべきものだと思っているが、この番組に限っては編集が終わるのが「あー、もう終わっちゃう!」という感覚だった。いちばんやりたいものが出来ている。

あとはこれを、皆様に見て頂くだけ。

僕はコロナ禍の混迷の時代の中で落合陽一という人と共に考えてこられたことを人生の喜びとしている。
そして、オードリータンという人に出会えたことも。

2023年の今と、遠くない未来に向けて、逆転のシナリオを語る1時間。
ぜひ、ご覧ください。

(阿部 修英)

※写真:ついに実現!2人とも10代から愛するカードゲームでの対決


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総合演出&プロデューサー

阿部修英

ディレクター

小林直希
髙村安以
中川奈津子
松本有哉

プロデューサー

大西隼
河瀬大作(Days)

デスク

竹之内優子(NHKエンタープライズ)

制作統括

松永 真一(NHK)
當眞 嗣朗(NHKエンタープライズ)