子供たちに残したい 美しい日本のうた 2019年4月
童謡「サッちゃん」(作詞阪田寛夫、作曲大中恩)。この歌をあらためて聴いて、涙が出そうになりました。自分のことをサッちゃんと呼んでしまう女の子サッちゃん。バナナを半分しか食べられないサッちゃん。無邪気な歌だと思っていたのですが、よおく聴いていくうちに、サッちゃんをじっとみつめている男の子の存在が気になり始めたのです。歌の主人公は、実は男の子なのです。そしてサッちゃんとの別れがやってきます。サッちゃんが自分のことは忘れてしまうことに気づくのです。ここで私は涙が出そうになりました。子供のころは感じることができた、言葉にならないあの寂しさを思い出したのです。童謡は、ふだんは忘れている、とおい記憶を蘇らせてくれます。
(中村哲夫)