FIFAワールドカップ2022 開幕スペシャル

FIFAワールドカップ2022 開幕スペシャル

今回の日本代表には、大空翼がいません。ゲームメーカー、ファンタジスタみたいに形容される選手がいないのです。翼くんをカリスマという言葉で置き換えても構いませんが、それもいません。そういう選手はチームの中心として分かりやすいけど、反面、そこを押さえられたらチームが機能不全になるという危うさも持ち合わせます。だから、森保監督はあえて翼くんをメンバーに入れていない!…のかと言えばそうではなく、そもそも日本にいま翼くんがあまりいないのです。ネットでは、小野伸二が練習中(試合ではない!)に超絶トラップを披露する度に話題になるくらいですから、小野の前にも小野の後にも小野はなし。しばし見られなくなったファンタジーを、40歳を超えた小野の中にみんなで懐かしく見ているのが今の日本サッカー界です。
サッカーはどんどんスピードアップしています。ここ何年、サッカーなんか見ていないという方、ワールドカップを見たら驚きますよ。4年前も速かったけど、今はもっと速いです。前へ前へ前へ前へ。目的であるゴールにひたすら直線的に向かっています。コロナの影響で交代枠が拡大されたこともあるのかも知れません。信じられないくらい、最初から最後までトップギアで走り続けます。元々フィジカル重視のイングランドやドイツだけでなく、技巧派のブラジルやスペインまで。アスリート色の強まったサッカーでは、ファンタジスタの居場所はないなのか。そんな気持ちになりますが、時代に逆行する変人がきっとどこかに隠れていると私は期待しています。サッカーのスピード化を印象づけた90年イタリア大会で、一人センターサークルをゆったりダンスしていたコロンビアのバルデラマのような変人。私は野球には疎いですが、速球投手がたまにスローカーブを投げるとバッターはタイミングが合わずに空振りするとか言いますよね。サッカーだって「時間を止められる」存在は大きく、尊いのです。
ドイツは、コスタリカは、スペインはどうか。思わず悲観的になるグループステージの組合せですが、勝ち負けは一旦置いておいて、日本から出て行った翼くんがどこかで密かに躍動している姿を探してみるのも楽しそうです。
(岸 枢宇己)

出演
岡田 武史(元日本代表監督)
中村 憲剛(元日本代表)
アンドレス・イニエスタ(元スペイン代表)
ルーカス・ポドルスキ(元ドイツ代表)
中川 安奈アナウンサー         ほか

総合演出

岸 枢宇己

ディレクター

永田 曉児
蜂谷 時紀
熊倉 健一

アシスタント

洪 先恵

LED

黒住 聡丈

中継

浦本 康平

キャスティング

嶺村 友江

制作プロデューサー

伊藤 恵
海老名真有美

プロデューサー

國分 禎雄