アナザーストーリーズ 運命の分岐点「オシムの涙 サッカーW杯 知られざる闘い」
イビチャ・オシムの話を聞くために、関係者へのインタビュー項目を紙に書きつけているのだが、普段以上にペンの動きが止まる回数が多い。オシムの言葉が脳裏をよぎる。「言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。このメディアは正しい質問をしているのか。そうでないのか。新聞記者は戦争を始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから」オシムの経験したユーゴスラヴィア紛争…それは、民族主義に加担したメディアの暴走から始まった部分もあるという。約30年前、ユーゴスラヴィアで血が流れた時、メディアの人間は自分の手をどのように見つめていたのだろう。今、日本のメディアの人間は、自分の手をどのように見つめているのだろう。
(小林直希)