あなたの街の名画を旅する

あなたの街の名画を旅する

「天海さんのモナリザ」
天海祐希さんはお父さんに肩車されて上野の美術館でモナリザを見た光景を覚えている。モナリザの微笑みは人垣の向こうでものすごく小さかった。後年、彼女はフランス・ルーブルで客がモナリザにかなり近づいて見られること、絵の周囲でスケッチをすることが許されているその自由な空気に驚く。そう、美術館は思い出の風景と重なる。
今回は「一枚の絵」をめぐる旅である。
何気なく入った美術館で気になる作品に出会うことの幸運は格別だ。日本各地の美術館には知られざる名作がたくさんある。絵が持つ魅力、技巧、さらになぜ、その街に、美術館に、その一枚の絵があるのかを紐解く。その絵が持つ数奇な運命。土地の風土に根ざした作品との出会いや芸術作品を広く地元の人々に届けたいと願う思いがある。そして各パートのディレクターが「絵をめぐる人生」も掘り起こしている。
天海さんの声には優しさとともに、生命力の強さがある。一枚の絵の場所へ連れて行ってくれる声だ。アンサンブルは元NHKアナウンサーで「2355」や「ねほりんぱほりん」の石澤典夫さんだ。
教科書に載っている作品だけが名画ではない。
たとえ初めて知る作家の作品でも絵や作品の持つ純粋な力に魅せられて、いいなあ、と素直に感じられる人でいたい。あなたにはあなただけの名画があるのだ。肩車されて見た表情もよくわからない小さなモナリザの光景。それこそが眩いアートとの記憶。絵も「旅人」だったりするのだ。



「清水さんのビゴー」
ビゴー研究の第一人者である清水勲氏はスタッフの日高が日参して様々な資料を提供していただくと共に素敵なコメントをたくさんもらった。遠くフランスで描いた「稲毛海岸」という一枚の絵が今、なぜ千葉市美術館にあるのかの一番のカギを握る人物である。番組の中でもビゴーに人生を捧げたその生き方を象徴するものとして、自ら建てた生前墓に「美郷」という文字を刻んでいるという話がエピローグとなった。清水さんご夫婦の明るい会話にスタッフは心が温かくなった。
そんな清水氏が放送日を前に急逝された。お元気で朗らかな表情は放送を楽しみにされていたことが悔やまれる。稲毛海岸の夕陽に魅せられ、土地を愛したビゴー。彼の実像を追い求める研究者。一枚の絵が結ぶストーリーは続く。

(加藤義人)

語り      天海 祐希
声の出演    石澤 典夫

総合演出・プロデューサー

加藤義人

ディレクター

小松知有

取材ディレクター

田村咲希子

制作マネージャー

日髙正吾

キャスティング

今山典子

タイトルデザイン

宮井勇気