今夜の旅はドラマチック「古都プラハ殺人事件」

今夜の旅はドラマチック「古都プラハ殺人事件」

【受賞のお知らせ】
武井佑吏(脚本・演出)が
本作で第37回ATP賞テレビグランプリ 優秀新人賞を
受賞しました。



現実×フィクションで描く新感覚紀行番組。
今回の旅先はチェコ共和国のプラハ。奇才カフカを生んだ美しき古都だ。主人公はどういうわけか犬に「変身」してしまった男ヤンと、彼を訪ねてきた日本人女性ナオミ。物語は冒頭、ナオミが何者かに刺殺されるところから始まる。いったい誰がナオミを殺したのか?ヤンは彼女との旅で出会ったプラハの個性的なやつらの記憶をたどり始める…。


家という「概念」は計り知れない。この半年で私が感じたことである。人間の“殆ど”全ての行動は、家によって代替可能なのだ。言い換えるなら、家の中にいて出来ないことは“ほぼ”存在しない。廉価になることさえ承知すれば、人間は家から出る必要がないのである。例えば、家はレストラン足り得る。ホテルであり、映画館でもある。温泉、コインランドリー、家電量販店、スキューバ、全ては家に置き換えることができる。
 どうして、私はこのような途方もない思考を巡らせているのか。理由は明白だ。半年間ずっと家にいたからである。チェコのドキュメンタリードラマを作っていた。ご時世柄、海外に渡航することは許されない。だから私は家にいた。家で構成を書き、家でロケハンをした。ロケが始まるとコーディネーターとFaceTimeを繋ぎ、現地のカメラをZoomで覗いていた。もちろん「家で」だ。ついでに編集も家。サイコーでファンキーな毎日だ。
 冒頭で「人間の“殆ど”全ては…」と綴った。なぜ「殆ど」なのか。一つだけ家で出来ないことを思いついたからだ。スキーだ。スキーだけは家でできない。改めて確認しておきたいが、スキー以外はできる。スケートもできるし、カマクラもできる。ただし、スキーだけはできないのだ。原理的に考えれば、スキーもできる。しかし、それは甚だ労力が必要であるし、非現実的だ。よってスキーはできない。
 そんなこんなで私は今日引っ越しをした。以前よりも会社から30分離れた、家賃の1万7千円高い家だ。私は会社に行く必要がないからである。私だけではない。きっと誰にとっても会社に行く必要はないのだろう。原稿を書きながら、ふと思ったが、引っ越しも家ではできない。これについて考えることは哲学だ。引っ越しとは家Aから家Bに移動する行為だからだ。仮に家Aと家Bが連結した住まいがあったとして、家以外を媒介せず引っ越しを終えたとする。これは家で引っ越しを完結したことになるのか?答えはノーだ。それは家Aから家A′に物を移動させただけなのである。引っ越しではない。
(武井佑吏)


<再放送のお知らせ>
NHK BSプレミアム/BS4K同時放送 2021年6月1日(火)20:00~20:59
NHK BSプレミアム/BS4K同時放送 2021年6月17日(木)18:00~18:59 
NHK BS4K 2021年7月1日(木)16:00~16:59

声の出演

豊原功補 玉井詩織(ももいろクローバーZ)

脚本・演出

武井佑吏

コーディネーター 

Adam Vackar

撮影

Marek Mysicka

音声

Zdenek Jensik

技術

Miroslav Venus

音響効果 

武田拓也

プロデューサー

宮﨑和子