パリオリンピック2024 開会式直前スペシャル(生放送)
酒を飲まない若者が増えたのと同じくらい、オリンピックを見ない若者が増えた。IOC(国際オリンピック委員会)の定例会議ではそんな風に嘆く理事たちの声が飛び交っているとかいないとか。
このタイミングでのパリ開催は、ちょっと考えさせられるものがある。古代オリンピックを復活させようと提唱したクーベルタン伯爵はフランス人。スポーツを芸術と同じように価値あるものと捉え、世界中を巻き込んだ一大イベントを作り上げた。元々の思想は健全そのものであって、金儲けとは相容れない。いつだって創始者には夢があり、追随する者が己の欲望を満たすため夢を利用する。
2021年の東京でオリンピックの幻想はついに限界を迎えた。閉幕後に次々と問題が発覚し、五輪の一つはもはや黒い輪っかになってしまいそうだ。
パリはこの時代に見合った最適のオリンピックの形を模索している。
セーヌ川で開会式を、ベルサイユ宮殿で馬術を、コンコルド広場でブレイキンを行うのは、アテネのように廃墟と化したスタジアムを無駄に増やさないため。ジェンダーフリーを合言葉に競歩では男女でペアとなってリレーをする。他にも中継を見ていれば色々と気付くことがあるだろう。史上最も「配慮の行き届いた」オリンピックであると。さて、クーベルタンは2024年版のオリンピックをどう見るだろう。なにしろ彼は元々女子の参加を認めていなかった。「いいねー、こういうオリンピックも」なんて懐深く受け止めるのか。
何かと影がちらつくお祭りになってしまったけれど、本質的には「世界一の大運動会」。表彰台の一番高いところを目指し、様々なものを犠牲にしてきた選手たちの思いと努力は尊い。強い、速い、高い、巧い、美しい。10代20代の輝く肉体が弾ける姿を、「若さっていいねー」と素直に楽しんでもらう番組です。
(岸 枢宇己)