BS歴史館 2013年6~8月放送分
「歴史とは現在と過去との対話である-」
かつてイギリスの著名な歴史家E.H.カーはこう記した。
目まぐるしく変貌する現代社会。政治、経済、文化、ミクロなレベルでは家族、男と女・・・。急速に展開するグローバル化やボーダレス化は、時計の針を猛スピードで進め、現代を生きる私たちはどこに立っているかさえわからなくなる。この時代をどう生き抜けばいいのか・・・明快な答えはない。
しかしひとたび、過去に眼を転じれば、時代時代にまさしく目まぐるしく変わる事象にリアルタイムで向き合い、悩み、格闘した先人たちの等身大の「歴史」がある。
サイン、コサイン、タンジェント…これが人生の何に役立つのか。学生の時、誰もが感じることと思う。そんなことをやっている時間があれば、英単語1つ覚えた方が、今ならずっと役に立つ。分かっているけど、とりあえずやっておこう…と思った"数学"。
今回のテーマは、江戸時代の天才数学者「関孝和」。西洋の数学とは全く交わることなく、日本独自の発展を遂げた日本の数学
"和算"。そんな関が活躍した江戸時代、実は空前の"数学ブーム"だった。老いも若きも、暇つぶしに数学に興じる時代。それぞれが問題を作って、それぞれが解き合って、良い問題が出来た時には、絵馬のようなモノに問題を記して、寺社に奉納したとか。その上、数学は"学問ではなく庶民の楽しみ"で、解く楽しみさえあればいいということなのか、解法が残っていないものが多いのだそう。
さて、江戸の数学問題。どんなものかと挑んでみた。当時の流行りは、どうも幾何学のようで、図形問題が多い。そのため実際解いてみると、解答用紙はサイン・コサイン・ルートのオンパレード。長ったらしい式の連続の後、案外単純な答えだったりすると、自分の解法があまりにも力技だったことに、げんなりしながらも、江戸数学のレベルの高さに驚く。そして何より、当時はサイン、コサインは使っていない。それを使わずに求める方法が、当時はあったわけだが、今、それを知る術がないのが残念である。
私たちがサイン・コサインで解く問題。200年前には、サイン・コサイン無しで解いていた。江戸庶民の数学への情熱を感じながら、サイン・コサイン・タンジェントが、人生の何に役立つのか、もう一度考えようと思った。
(五鬼助洋美)
受賞のお知らせ
渡辺真理さん “放送人グランプリ2013 特別賞” 受賞!
「BS歴史館」の司会として、渡辺真理さんが特別賞を受賞しました。
BS歴史館「伊能忠敬 ~「日本」を知らしめた男~」(2012年10月放送)が
「第50回 ギャラクシー賞」奨励賞を受賞しました。
6月20日(木)放送
シリーズ 江戸のスーパー日本人1「関孝和 世界水準の“和算”を創り出した男」
ディレクター 松沢真実
リサーチ 高村敬一
8月1日(木)放送
「大江戸・妖怪ブーム」
ディレクター 佐野達也
プロデューサー
アシスタントプロデューサー
五鬼助洋美
AD
小山慎介 黒住聡丈
畑中皓太 山崎美生
上田真美
制作統括
齋藤圭介(NHK)
菊池正浩(NEP)
谷口雅一(NEP)