BS歴史館 2014年1月の放送

BS歴史館 2014年1月の放送

テレビマンユニオン担当回 1月9日(木)

「歴史とは現在と過去との対話である-」
かつてイギリスの著名な歴史家E.H.カーはこう記した。
目まぐるしく変貌する現代社会。政治、経済、文化、ミクロなレベルでは家族、男と女・・・。急速に展開するグローバル化やボーダレス化は、時計の針を猛スピードで進め、現代を生きる私たちはどこに立っているかさえわからなくなる。この時代をどう生き抜けばいいのか・・・明快な答えはない。
しかしひとたび、過去に眼を転じれば、時代時代にまさしく目まぐるしく変わる事象にリアルタイムで向き合い、悩み、格闘した先人たちの等身大の「歴史」がある。


「道は日本中に張り巡らされており、道の一カ所を巨大なピンセットでつまんで剥がしたならば、日本列島の形をした、アスファルトの網が取り出せる」
学生時代の論文で都市論を扱ったときの、ある章の書き出し。完全に若さ故の迷走をしているわけだが、そのとき感じていたのは、「地図っていうのは、そもそもある“街”や“日本”という場所の形を表したもの。でも、例えば東京の場合、建物だらけで、しかも、それらの建物はほとんど自分には無関係。となると、結局は、いくつかの建物に行くために、ひたすら道を移動しているだけ。つまり、私の中での“東京”は、“99%は道”でしかなく、東京の形は、地図で見る“モノだらけの地面”ではなく、“網状のアスファルト”なのかもしれない。」ということだった。地図に描かれた実際の東京。高密度の東京の地図を見る事は、逆に、各個人にとってこの街は、スカスカであることを感じさせられた。高密度の街の地図は、その街が空隙の街であることを意味していた。
 さて、どれだけ見ても見飽きない地図。ということで、地図の誕生と言えば、江戸時代に伊能忠敬が作った、本格的な実測地図。この日本地図のおかげで、当時の日本人は、初めて日本を俯瞰的に見ることになり、日本のカタチを目で認識することができるようになった。そこから日本人の中に“国家”という意識が初めて芽生えたという。鎖国を続けながらも、これから西洋列強が迫ってくる当時の日本にとって、このタイミングで国家意識が植え付けられたことは、日本史上の国防という側面でも、意味深いものだったそうだ。
 今も昔も、地図っていうのは、地面のカタチだけを描いているふりをしながら、そのモノが意味しているのは、いつも全く別の事みたいです。
(五鬼助洋美)

受賞のお知らせ

渡辺真理さん “放送人グランプリ2013 特別賞” 受賞!
「BS歴史館」の司会として、渡辺真理さんが特別賞を受賞しました。

BS歴史館「伊能忠敬 ~「日本」を知らしめた男~」(2012年10月放送)が
「第50回 ギャラクシー賞」奨励賞を受賞しました。

1月9日(木)放送

江戸のスーパー変革者① 松尾芭蕉 17文字で日本を変えた男

京都の王朝文化が育んできた“雅(みやび)な文学”を破壊し、その後の日本文学に大きな影響を及ぼした芭蕉の改革とは。

ディレクター  小林陽子
リサーチ    高村敬一

プロデューサー

國分禎雄 

アシスタントプロデューサー

五鬼助洋美

ディレクター

上野関一朗 佐野達也 
琢磨修一  佐藤憲正
小林陽子  松沢真実
畑中皓太

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黒住聡丈
山崎美生
上田真美

制作統括

齋藤圭介(NHK)
谷口雅一(NEP)
菊池正浩(NEP)
山本展也(NEP)