沖縄からはじまり、この２年間で３０県をまわった中田英寿の旅。ほぼプライベートなその旅に、小型のムービー一台を抱えたディレクターが同行して、記録を続けてきました。これまで中田さんのウェブサイトでのみ紹介されてきたその様子が、この３月から１年間、テレビで放送されることになります。伝統工芸・芸能の大家、こだわりの農家、知られざる秘境の一軒宿に隠れ家レストラン、由緒ある寺社仏閣に発電所?。旅の様子を記録したテープは、まだ１７県を残して、すでに５００本にものぼります。しかし、いわゆる撮影の基本である、訪問先の外観だとか、玄関を入っていくショット、作品や作物のヨリやヒキ、本人の感想コメント、そういったものがほとんど存在しません。なぜなら、この旅の大命題は、そんなことよりも先を急ぐこと！だから。当然、いざ番組にしようと思ったらこれが想像以上に難儀なこと。本来あるべきとされるものが無い状況で、どうやったら2分弱の番組を成立させられるのか。無いものと腹をくくって編集をしているディレクター達からは、時に思わぬ妙案奇案（暴案？）が生まれてくることも。土曜日の夜、ダイナミックな『世界ふしぎ発見！』の映像をご覧になった後は、隣のチャンネルで、ぎゅっと地味だけどチャレンジングなこの番組もお楽しみください。
（渡辺　誠）