サラメシ
これまでサラメシでは、その街に欠かせない飲食店の閉店、サラリーマンの定年退職など“最後”を何度か取材させてもらったが、その“最後”はちょっと別物だった。
この5月末で休刊となり、101年の長い歴史の幕を下ろした「週刊朝日」の編集部、その最後の日々を取材させてもらった。
実はボク自身、週刊朝日に限らず週刊誌を読む習慣がない。にも関わらずなぜか、強烈な寂しさに襲われた。当たり前のはずのものが消えてゆく…時代の移り変わりを目の当たりにした寂寥感なのだろうか。しかし当の編集部は、休刊発表以来、様々な「さよなら企画」を誌面に展開、読者の人たちと共に盛大な打ち上げを!という固い決意のようなものが、言葉の端々に感じられた。
中でも特に印象的だった一コマ。校了最終日である土曜の夜。かつて怒号が飛び交っていたはずの締切直前の週刊誌編集部は、必要最低限の人間だけで閑散としていた。そこへ突然、匿名のお届け物。一瞬怪しい…と思ってしまったが、はたして中身は、「編集部の皆様へ」という大福の差し入れだった。さらに長年の愛読者だという主婦の方から直筆の手紙も。視野を広げてくれる教養の場だった…本当にありがとう…と労いの言葉が綴られていた。カメラの前で手紙を読んでくれた編集長、言葉を詰まらせ最後に小さく「申し訳ない…」と一言。
「うれしい」ではなく「申し訳ない」。その一言に、ずっと読者と共に作ってきた週刊朝日の哲学が感じられた。いつもお喋りなサラメシが、このシーンは2分近くナレーションを入れられなかった。
こんな瞬間に、こんな最後に立ち会わせてくれたことに、テレビとしての幸せを感じながらふと思い出したのは、「ディレクターは運だ!」という弊社の先輩・白井博の口癖。酒席で毎回といっていいほど聞かされてきた。…たしかに納得だ。大福と手紙はもちろん偶然、言わばうれしいハプニングだ。ただ、ディレクターの石井が強運の持ち主だったのかどうか。カメラの奥田さん、VEの定別當さん、ADのスヒョン…誰が引き寄せた運かはわからない。
とにかくサラメシは、これからも“運のよい番組”でありたいと思う。
(松葉直彦)
今月の放送
シーズン13 #22 「食欲の秋まんぷくSP 季節のごちそう大盛りで!」
11月2日(木)19:30~19:57<関西地方を除く>/11月5日(日)あさ8:00~8:23<関西地方のみ>
再放送11月9日(日)ひる12:20~12:43
食欲の秋いよいよ本番!季節ならではのランチを厳選してお届け▽千葉・八街の落花生に埼玉・深谷ネギ。全国有数の産地で出会った農家のお昼ごはん。落花生のおこわにホクホクゆで落花生、ネギたっぷりみそ汁に自家製野菜たっぷりのおかず。家族仲良しほのぼの秘話も▽まるで生ハム?-西伊豆のかつお節店に伝わる伝統食「潮かつお」。うまみと塩気が絶妙!おにぎりで▽長野は野沢菜の収穫で大忙しの女性たちのにぎやかランチタイム
シーズン13 #23 「ボートレーサーとレコード原盤工場のランチ▽崔洋一」
11月9日(木)19:30~19:57<関西地方を除く>/11月12日(日)あさ8:00~8:23<関西地方のみ>
再放送11月16日(日)ひる12:20~12:43
福岡を拠点に活躍するボートレーサー魚谷香織さんは3人の子を育てるお母さん。レース開催前は宿舎に缶詰めになり家族との電話も禁止。ベスト体重を維持するため食事も制限だらけ。勝負の世界で生きる理由とは?▽レコードの生産に欠かせない原盤「ラッカー盤」。世界で唯一の生産工場が長野県の山あいの村にある。わずかなチリも許さないという緻密で丁寧な仕事ぶりとランチを拝見▽映画監督・崔洋一さんが愛したソーセージ。
シーズン13 #24 「酒田から世界へ!ゴルフクラブ工場▽カスタネット」
11月16日(木)19:30~19:57<関西地方を除く>/11月19日(日)あさ8:00~8:23<関西地方のみ>
再放送11月23日(日)ひる12:15~12:38
山形県酒田市にあるゴルフ用品総合メーカーの工場。アマチュア向けからプロ用まで、ベテランの職人たちの手で作られたクラブが酒田から世界へと送り出されている。社員の多くが利用するという社員食堂の人気メニューは?▽群馬県みなかみ町にあるカスタネット工房。赤と青でおなじみのカスタネット、実はこの町の木工職人が試行錯誤の末に生み出したもの。キャリア60年という職人の地元野菜たっぷり、手作りランチを拝見!
シーズン13 #25 「まるごと群馬SP 豊かな自然と食 受け継ぎ守る人」
11月23日(木)19:30~19:57<関西地方を除く>/11月26日(日)あさ8:00~8:23<関西地方のみ>
再放送11月30日(日)ひる12:20~12:43
群馬県内各地の奥深~い仕事とランチをご紹介▽生産量日本一!だるまの産地、高崎市の工房をお弁当ハンターの阿部了さんが取材▽本州最大の湿原・尾瀬。貴重な植物を踏み荒らさないよう整備された木道。その修理、架け替えを担う人たちのパワーの源、山小屋で頂くチカラめし▽地元の子どもたちに大人気のレトロ遊園地。陰で支える副園長さんの秘めた思いとは?▽小麦の産地、群馬の新名物!高崎パスタ店の絶品まかない。
再放送のお知らせ
シーズン12 #21 「社長念願の小さな社食▽サラリーマンラッパー」
11月2日(木)ひる12:20~12:43
東大阪市にある物流会社に3年程前、小さな社員食堂ができた。社食は社長の念願!調理スタッフは、60代の女性2人。 “おふくろの味”にこだわったサラメシを拝見!▽三重県の工場に勤める伊藤純さん。勤務を終えるとラッパーJEVAに大変身!クラブで活躍している。「サラメシ」の大ファンだという伊藤さん。働く人たちと昼食をテーマに曲を作り歌っている。JEVAのラップにのせて、伊藤さんのランチタイムをお届け!
サラメシ英語版
『Lunch On!』
NHKワールドJAPAN 木曜13:30~、17:30~ 金曜1:30~、8:30~
11月 2日「週刊朝日 最後の校了」
11月 9日「離れていても繋がれる!安田家」
11月30日「魚の剥製プロの技」
ナレーション
中井 貴一
プロデューサー
松葉直彦 松尾明美
アシスタントプロデューサー
宮﨑和子
構成
たむらようこ 服部真由子
リサーチ
冨田紀子
音効
井田栄司