
「欧州のパンかご」
ウクライナでは、中継の最中にも爆弾が落ち、行き場を失った民衆が絶望に包まれている。切なくて見るに堪えないが、その向こうでロケット弾のスイッチを押すのは、ゲーム世代だ。リセットが効かない現実には、実感が湧かないのだろう。しかし、これは戦争を知らない我々が、初めて同時進行で目にする戦争の地獄絵だ。攻撃される側の映像ばかり見ていれば、どんな大義があろうと、悪いのはロシアだと世界中に植え付けられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアは我々の国や人々だけでなく、自由に生きる権利を攻撃している」と、西側全体に対する戦争だと主張している。そのウクライナは「欧州のパンかご」と呼ばれ、大麦、小麦、トウモロコシ、ヒマワリなどを育む豊かな穀倉地帯だ。そこが戦車で踏みにじられ、チョルノービル(チェルノブイリ)では放射能のチリが舞い上がる。ロシアは資源大国だ。自由社会が経済的に包囲すれば、同時に自分たちの首も絞める。世界はつながっているのだ。「食彩の王国」も他人事ではいられない。
(土橋正道)
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