
「夏が来れば思い出す」
ネコの額ほどの庭だが、手入れをすれば驚くほど汗が流れる。塩分を補給して、水を飲め、涼しいところで休めというが、食材の生産現場ではそうもいくまい。世界中の生産者が暑さに耐え、我々の食を支えてくれていることがありがたい。消費者物価指数は上がるばかりだが、誰にも幸せは訪れない。ロシアがウクライナに仕掛けた戦争が諸悪の根源だが、景気低迷が続く日本には大打撃だ。夏は同時に、敗戦当時を思い起こさせる。戦争は経験しなかったが、食糧難のことは思い出す。上野、新宿、渋谷などのガード下には手足を失った傷痍軍人が座り込み、アコーディオンなどを弾いて物乞いしていた。全身白ずくめで包帯を巻く、その異形が目を引いた。同じ場所を行き交う、買い出し、配給、食べるためだけに右往左往する大人の姿を覚えている。穀物の一大産地・ウクライナにも、やがて都会では同じ情景が繰り返されることだろう。戦争がない世界へ導く、人類の英知に期待したい。
(土橋正道)
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