その土地だから生まれた、というおいしいものが日本各地にある。奄美大島のミキもそのひとつ。米とサツマイモと砂糖を発酵させたドロリと甘い飲み物で元々は島の神事で神と人をつなぐ「お神酒」であった。２５年前、新米ディレクターだった私は奄美の暑さにやられロケハン中に寝込でしまった。その時に救ってくれたのが宿のおばさんの手作りミキであった。冷たいミキはドロリドロリと体中を巡り、私は元気を回復！奄美で１００歳を超えて長生きする人が多いのはミキがあるからだ、と私は確信した。食欲がなくても、歯がなくても飲めるミキは万能長寿食なのである。
食べ物に限らずだが、各地で名物と呼ばれるものは、気候や地形と深く結びついている。歴史もその土地の食文化に大きく影響する。旅人の「おいしい！」笑顔と共にそのことも忘れずに伝えていきたい。
（森　明子）