おまえなしでは生きていけない ~猫を愛した芸術家の物語~ 第三夜 向田 邦子
第三夜 向田 邦子 愛猫だけが見ていた人気脚本家の涙
◆「あたくし、そういう時間はありませんので悪しからず」ピシャリと言って電話は切られた。昭和55年秋、直木賞受賞直後「働く女性」に関してのインタビュー依頼が、向田邦子さんとの最初で最後のコンタクト。◆翌年8月22日、余命2ヶ月と言われた父の病室のテレビで彼女の訃報に接した。意識朦朧の中「すぐ東京に戻らなくていいのか?」と父は言った。(向田さんの葬儀に駆けつけるほど、娘は立派じゃないんだよ、お父さん)1ヵ月後、父は55歳で逝った。◆あれから30年、今やっと向田邦子さんと向き合っている。シナリオ、エッセイ、小説どれをとっても彼女は圧倒的だ。才能にあふれ潔くて格好いいTV界の大先輩。(参っちゃうよなぁ、同時代を生きてたらメチャメチャ嫉妬しただろうなぁ⋯)◆完敗なので、愛猫だけが見た向田さんの別の顔をご紹介する。
(合津直枝)