どことなくどんよりした空気が続く中、びっくりするくらい清々しい本気のガッツポーズを目の当たりにした。昨年、AD野口が演出デビューしたときの話。コロナ禍ゆえ、オンラインインタビューやカメラを送って撮ってもらう〝おまかせ撮影〟という不自由な取材。それでも取材相手に恵まれ、たっぷりいい素材が集まった。
が、当然ながらロケ前に作った構成どおりになんていかない。気持ちいいくらい苦しんでいた。当たり前だ。サラメシは簡単に見えるが、実は難しい。先輩ディレクターたちはロケでも編集でも、技巧と誠意の限りを尽くしている。ちなみに、個人的にサラメシでずっと目指しているのは、作家・井上ひさしさんの「自分にしか書けないことを、誰にでもわかるように書く。」のTV版だ。
先輩に細かなアドバイスをもらいながらも野口、思うようにならない。いや本人的にはなってたのかも知れないが、誰かに見せるたび、思いもよらない角度からダメ出しがくる。結局通常の倍くらいの日数編集室に籠り、どーにかこーにか全体プレビューを迎えた。当然、また細かな修正すべきポイントがいくつも出てくる。その回の全コーナーの修正が済み完尺になったのは、夜10時頃だった。作家も局Pも帰り、他のコーナーを担当してた先輩たちも、翌日の本編集の準備で自室に戻ったとき、それまで静かだった野口が唐突に「乗り越えた～！」と高らかにガッツポーズをかました。それはそれはアホみたいに清々しかった。聞けば、全体プレビューの前の週末、もうムリかも…とあきらめて白旗をあげるつもりだったという。だからこそのガッツポーズ…たまたまボクしか見ていないのが残念だが、その場にいられたことが素直に嬉しかった。
サラメシはこの春から11年目に入ります。そろそろ長寿番組に数えられる頃ですが、若手の企画もいくつも動き出し、新たな風を吹かしつつあるので、まだまだ攻めの姿勢で闊歩させていただこうと思ってます。
（松葉直彦）

【今月の放送】※木曜日 昼12：20～の再放送は、23分の短縮版です。

シーズン11　＃１「最後の母弁/さよなら藝大食堂」　4月6日（火）19:30～19:57
再放送　4月8日（木）ひる 12:20～12:43／4月11日（日）あさ 8:25～8:52
静岡県の特別養護老人ホームに勤める女性からの投稿によると、結婚を機に退職するため母の手作り弁当生活が終わるのだとか。“最後の母弁”をのぞき見！▽以前サラメシで紹介した東京藝術大学の学生食堂が、ついに閉店するとの知らせが。半世紀にわたって芸術を志す学生たちの胃袋を支えてきた店主の最後の日の昼ごはんを、クリエイティブ・ディレクターで教授の箭内道彦さんが自ら撮影。学食名物“バタ丼”をリポートする。

シーズン11　＃２「弁当がつなぐ父と娘/宍戸錠が愛したカレー」 　4月13日（火）19:30～19:57
再放送　4月15日（木）ひる 12:20～12:43／4月18日（日）あさ 8:25～8:52
埼玉県草加市の６７歳男性が弁当づくりを始めたのは４年前のこと。妻が他界してから、毎日元気でいる証しとして、離れて暮らす娘に弁当の写真を送り続けている。味だけでなく見栄えにもこだわり、職場でも注目を浴びるという男性の手作り弁当と、遠くで見守る娘の弁当ライフをのぞき見する。▽ブラジルから海外サラメシ特派員。首都ブラジリアの日系３世、日本語教師がランチ事情をリポート！▽宍戸錠が愛した撮影所のカツカレー。

シーズン11　＃３「絶品まかない居酒屋/米海軍基地で和弁当/福島の水族館」 　4月20日（火）19:30～19:57
再放送　4月22日（木）ひる 12:20～12:43／4月25日（日）あさ 8:25～8:52
千葉県茂原市にある家族経営の居酒屋では、店長が自らつくるまかないをスタッフにふるまっている。コロナ禍で経営状況が厳しい中、取引先や常連客のために店を開け続けるこだわりと、おいしいまかないを妻がリポート！▽アメリカ・シアトル近郊の町からサラメシ海外特派員！海軍基地の潜水艦ベースで食べる和風唐揚げ弁当！？▽福島県いわき市の水族館でトドやアザラシの世話をする飼育員たちのランチを自撮りリポートでお届けする。

シーズン11　＃４「春のまかないスペシャル/閉店する青果店最後の昼」　4月27日（火）19:30～19:57
再放送　4月29日（木）ひる 12:15～12:38／5月2日（日）あさ 8:25～8:52
これまで紹介してきたおいしそうな「まかない」から、選（え）りすぐりのランチをお届けする、春のまかないスペシャル！▽お笑い劇団「ワハハ本舗」の若手劇団員たちの胃袋を支える、劇団専属シェフ▽京都の西陣織工房、親族９人の昼を支えるまかない▽東京・江東区の歯科医院の昼を６０年にわたり支える院長母のまかない▽名古屋の調理道具専門店のまかない▽東京・世田谷で店を閉じる青果店、最後の日のまかない。